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「朝美ちゃんにお姉さんがいた事は知ってた。前に家に行った時に朝美ちゃんのお母さんがそっと教えてくれたから。……そっか、デートつまらなかったか。ごめんね。僕、気が利かないって妹からよく言われるから」
違う。
違う。
違う。
蒼介くんは何も謝ることなんかない。
悪いのは、泣き喚く私の方なのに。
「朝美ちゃんが別れたいと言うなら、少し考えるけど、今のが理由だったら別れたくない。付き合うきっかけは誤解だったかもしれないけど、僕達が過ごした3年間は嘘じゃないだろう? あと、薄々スポーツが好きなのかなとは思ってた。スポーツを題材にした小説とか選手のエッセイ本は一緒に行った本屋で買っていたから。僕にも勧めてくれたし」
別れたい。
だって蒼介くんは私には勿体ないくらいよく出来た人だから。きっと、夕香ちゃんの方がお似合いだ。
なのに。
「……別れたくない。本当は、蒼介くんの事、大好き。ごめんなさい、取り乱して」
私は蒼介くんの腕から離れて涙を拭った。
蒼介くんは微笑んだ。
「良かった、嫌われたわけじゃなかったんた」
その優しい声が半分しかない心に染み渡る。
ああ、夕香ちゃんの声も好きだったけど、蒼介くんの声も同じくらい好きだ。そう思った。
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