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3.記憶の手帳
僕は、次の日も青島神社へと足を運んだ。
今日は、紙芝居を持っていなかったが、ヒコちゃんは神社の中に居た。
カラカラと音をたてる錆びたチェーンのお下がり自転車を手で押し、神社の祠の隣に止めた。
音に気づいたのか、こちらへ歩いてくる。
「今日も紙芝居?」
ワクワクした声で聞いてきたが、今日は紙芝居は持ってきていなかった。
(ヒコちゃんがいたなら持ってこればよかったかな、、、)
「ごめんね、、、今日は持ってきてないんだ」
そういうと、悲しそうな顔をするヒコちゃんを見て、僕は心の中でニヤニヤする。
「悲しんでるのになんでニヤニヤしてるの!」
心の中だけのつもりがつい顔にも出てしまっていたらしい。
過失だ、、、
「なんでニヤニヤしてるかだって?これを見ろ!」
僕は肩にかけた使い古したウェストポーチから、薄汚れた黄色い手帳をヒコちゃんの目の前に差し出した。
「これは、僕が紙芝居の物語を考える時にメモを取っている手帳なんだ!」
鼻を高くして、昨日と同じ賽銭箱の隣に2人で座り、記憶の紙を開くのだった。
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