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4.別れ(2)
人間とロボットが対峙する話、
奇病の女の子がひとつの恋を手に入れる話、
他にも色々、、
汗や指紋でふやけた紙の束には、幾千もの幻想的な世界が広がっていた。
抑えようにも抑えられないワクワクに身を任せ、文字の世界を旅した。
旅が終わりに近づいてきた時
その世界を切り裂くかの如く、霹靂が空に響き渡る。
僕は顔を上げ、辺りを見た。
豪雨の音が、僕の言葉をかき消すように地面に強く打ち付けている。
「突然なんだけど、僕、中学生になったら宮崎を離れるんだ。」
耳から雨音が消え、静寂になった時
苦しいほどの悲しみを押し殺しヒコちゃんに告げる。
「今日は君にこれを渡すために来たんだ。君が居てくれてよかったよ。」
ヒコちゃんの目尻に涙が溜まるのを見た僕は、現実から目をそらし、雨の中へと歩いていく。
「バイバイ、またいつか会おうね」
雨に打たれながら振り返った僕の嗚咽は雨音に、
涙は雨の中に姿を消していった。
僕が去ったあと、ヒコちゃんはしばらく座ったまま動かず、メモ帳に残るあっくんの温もりを感じながら参道に涙を落とした。
メモの最後には、走り書きで文字で
”絶対有名になるからその時は、一緒に僕が作った話を見よ!”
とだけ書かれていた。
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