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─4─
チャイムが鳴り、化け物は教室へ戻っていったが、その様子を見に行くことにする。
この学校は、一学年ひとクラスで、一年生と、二年生の教室は一階にある。三年生の教室は二階で、当時、三年生になり、二階に教室が移ったことで、大人になったような優越感を感じさせた。
さっきの奴らは、確か、一年生のクラスに入っていったはずだ。
かがみながら、静かにドアのガラスから、中の様子を覗く。
「こ、これは……」
そこには、授業をしている化け物がいた。教員の影が教壇に立ち、黒板に向かい、なにやら授業をしているようだった。
──そうか。さっき、チャイムが鳴り、教室から出てきたのは、授業が終わり休み時間になったから。そして、二回目のチャイムは、休み時間のお終わりを告げるもので、授業が始まる合図なのだ。
となると、授業中は安全ということになる。ならば、探索は主に授業中の方がいいだろう。
しかし、それでは教室を永遠に探索出来ないことになる……。それはあとで考えることにし、他の教室から探索を進めることにしよう。
一階には、職員室、保健室、一、二年生の教室、体育館の他に、音楽室、美術室、図書室、生徒指導室があるはず。もう、何年も前のことなので、うる覚えではあるが。
次は、音楽室の様子を見に行くことにしよう。確か、一、二年生の教室の右斜め向かいにあるはず。
四つん這いの体制になり、静かに一、二年生の教室を抜け、音楽室へ向かう。音楽室に誰もいないことを確認し、慎重にドアを開ける。
中は当時のままだった。歌が下手だった俺は、合唱の練習は常に口パクだったことを思いした。──苦い思い出だ。
手がかりになりそうなものがないか、隅々まで探す。
壁には、定番のバッハやベートーベンの肖像画が飾られてあった。この状況下では余計に不気味で、目が閉じたり、今にも飛び出してきそうで、恐怖を感じる。
教室の奥には大きなグランドピアノが置いてあった。せっかくの立派なピアノには、雪のように埃が降り積もっていた。
特に何も見つけることができず、諦め部屋を出ようとした時だった。突然ピアノが鳴りだした。
振り返ると、神野がピアノを弾いていた。その隣に背の高い男性が、ピアノに手をかけ立っている。
近づき、男性の顔を見る。
──担任だ。担任の赤井俊介。背が高く、顔立ちもはっきりとしており、男から見てもかっこいい。
神野は穏やかな顔つきで、ピアノを弾いていた。
学校で、こんな顔をするなんて……。もしかすると、この担任の赤井俊介は唯一、信頼のおける人物だったのかもしれない。
「一人きりではなかったのか……」
そう思うと、少しほっとしている自分がいた。こんなにも恐ろしい目に遭っているというのに、感情移入している自分に驚く。
一曲が終わる頃には、二人は消えていた。
結局、手がかりに繋がるようなものは何も見つけることはできず、音楽室をあとにした。
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