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いつかまた彼女と結ばれて、二人で幸せに暮らす日々。俺も少しは大人になったから、きっと今度は彼女を幸せに出来る。二度目のチャンスが俺に訪れやしないだろうか。
仲直りのプレゼントを温めつつも、既に他に相手がいるかもしれないと怖気付いて彼女に会いに行くこともしないくせに。
俺は本当に自分勝手だ。
自分の幸せばかり考えてしまう事に飽き飽きしていた、そんなある春の日。
彼女は突然、俺の目の前に現れた。
偶然の再会に驚きを隠せない美久里に、同じように驚いた俺だったが、気づくと美久里を抱きしめていた。ハッとして言い訳を並べ何でもないことを装う俺は、橋の手すりに腕を乗せた。恥ずかしさで顔が熱いのを夕日のせいにした。
すると、意外にも普通に美久里は俺と話してくれた。少し大人っぽくなった美久里は一層の輝きを放っていた。
彼女は俺を海に誘った。
また美久里と二人並んで歩けるなんて、夢みたいだ。
まだあの時の事を謝っていないのに。
あの頃言った事を覚えているかと聞かれた時、咄嗟にシラを切ってしまったのに。
嫌な顔一つしない明るい美久里に、俺は既に許しをもらった気でいた。
日もすっかり落ちた海は暗いが、その分よさを感じられた。
俺に触れて去っていく海風が、俺の罪を全て取り去ってくれるような気がした。
そんな海の堤防の先端で、美久里は腰を下ろした。俺もその隣に座る。
大好きな海と、大好きな人。
こんな幸せ、感じていいものなのだろうか。
まだ、謝ってもいないのに。
「そうだ、飲み物作ってきたんだ。飲む?」
そう言って美久里はボトルを取り出した。恋人みたいと内心喜びながら、俺はそのボトルを受け取って蓋を開け、口にした。
少し濃くてほんのり甘い、独特の味。
これが何なのかというよりも、この時間が幸せでたまらなかった。
言葉が途切れ、謝らなくてはと心臓を鳴らす俺は、静まった時間をその飲み物に頼った。美久里は俺がそれを気に入ったのだと、嬉しそうに笑った。
本当は、本当はな、美久里...
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