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目前には風に揺れる草原の緑。
背後には川面、微かに碧く波打つ。
空木安曇はローラーのないスケートボードを草原に置くとボードに足を掛けた。
右手の掌に取り付けたリモコンのパワーボタンを薬指で押す。
ボードはフワッと浮き上がるとゆっくり動き出し両足を置いてバランスを取りつつ、目にかかる黒髪を手で払ってからそろそろと加速をつけていき、くんっと風を嗅ぐ。
背後の川からくる追い風の匂いに優しい秋草の薫りが混じる。
噴射ボタンを押し、ボードの後ろからブワッという音と共に空気砲が発射された。
そのまま追い風の波に乗って、天高く舞い昇るとうるさかった前髪も風に靡いて視界は広がり空を抱きしめるように両手を広げて安曇は叫んだ。
「やっとほーちゃんと一緒に翔べる!」
声はそのまま風と一緒になって空に昇った。
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