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「それで、自由恋愛に絶望した美蘭ちゃんは、お見合いに挑んだが撃沈した、と」
「お見合いならそのまま上手いこと転がればなんとかなると思ったのに……。『僕にはもったいない方なので』とか、典型的なやつで断られた……」
私の父は大学教員だ。頭の出来は全然受け継がなかったけど、アカデミックな世界に伝手はある。先日、父の知り合いの知り合いを紹介してもらったのだ。某私大にお勤めの准教授。楔形文字が元々の専門だけど、西洋史学全般を教えている、らしい。
「清楚なワンピース着て! 相手がどんなネタを振ってきても『さすがですね!』『知らなかったです!』『すごいですね!』『せっかくなのでもう少し聞かせてください!』『そうなんですか!』で、にこにこ笑って対応したのに……!」
「そら、つまらんな……」
「どうせみんな私の顔にしか興味ないし、こっちだって顔にしか自信がないんだから、最大限売り込んで何が悪い……!」
私がそう言うと、研ちゃんは少し眉を寄せ、微妙な表情を浮かべた。あきれた、という方が正しいかもしれない。
なんだかいたたまれなくなり、もずくをすする。おいしいけど、いつもよりすっぱく感じるのは、気のせいだろうか。
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