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「え、え、まさか……そんなしょぼい理由で……」
「あと……これまで常勤職じゃなかったから」
「そ、そんなん、私が働いて食わせる!」
研ちゃんが吹き出す。笑うな。
「美蘭ちゃんはそう言うよな。でも、五つも年上なのに、それはちょっと情けないなと思ってた。だから」
「だから?」
「常勤職が見つかるまで、言えなかった」
「見つかるまで?」
「決まった。来年度から大学の講師」
ずっと探してた安定した仕事が見つかったんだ。思わず笑みが漏れる。
「やったあ! 研ちゃんがんばってたもんね! おめでとう!」
私がお祝いを言うと、ありがとうと言って研ちゃんも嬉しそうに笑った。
「俺は、澄ました表情じゃなくて、全開で笑ってる美蘭ちゃんが、いい」
「私は、研ちゃんでもいいんじゃなくて、研ちゃんがよかったんだからね! 最初から!」
「最初?」
「初めて会った時から!」
「初めてって……美蘭ちゃん中学生じゃなかった?」
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