マーケティング・リサーチ あるいは傾向と対策

9/17
前へ
/17ページ
次へ
 初めて会って、好きになった日に、失恋した。  その日、お兄ちゃんが連れてきたのは、親友とその彼女。  研ちゃんが当時付き合っていた女性は、頭がよくて大人で。お似合いだった。  家に遊びに来るたびに、研ちゃんは私を可愛がってくれたけど、妹みたいな存在に過ぎないってわかってたから、最初から諦めていた。  好きだと想いを告げて、居酒屋の飲みに付き合ってくれる研ちゃんを失うのが、怖くて。 「もっと早く想いを告げるべきだったか」 「なにそれ」 「振られたら美蘭ちゃんの兄みたいな立場まで失うから、足踏みしてた」 「もう……頭いいのに! バカなの?!」 「恋する男は臆病なんだよ」 「私も、何度も諦めようとしたけど、諦められなかったよ」 「さすがにそこまで前から好かれていたとは思ってなかったけど」  俺も結構長いこと、片想いしてたよ。そう耳元で囁かれた。  うまくいくか、いかないか。結果はいつでも二つに一つ。  論理的に考える研ちゃんが、失うことを恐れて足踏みしていたなんて。思ってもなかった。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

85人が本棚に入れています
本棚に追加