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初めて会って、好きになった日に、失恋した。
その日、お兄ちゃんが連れてきたのは、親友とその彼女。
研ちゃんが当時付き合っていた女性は、頭がよくて大人で。お似合いだった。
家に遊びに来るたびに、研ちゃんは私を可愛がってくれたけど、妹みたいな存在に過ぎないってわかってたから、最初から諦めていた。
好きだと想いを告げて、居酒屋の飲みに付き合ってくれる研ちゃんを失うのが、怖くて。
「もっと早く想いを告げるべきだったか」
「なにそれ」
「振られたら美蘭ちゃんの兄みたいな立場まで失うから、足踏みしてた」
「もう……頭いいのに! バカなの?!」
「恋する男は臆病なんだよ」
「私も、何度も諦めようとしたけど、諦められなかったよ」
「さすがにそこまで前から好かれていたとは思ってなかったけど」
俺も結構長いこと、片想いしてたよ。そう耳元で囁かれた。
うまくいくか、いかないか。結果はいつでも二つに一つ。
論理的に考える研ちゃんが、失うことを恐れて足踏みしていたなんて。思ってもなかった。
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