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マーケティング・リサーチ あるいは傾向と対策
顔にしか自信がない。
頭は悪いし、気は利かないし、がさつだ。
今まで付き合った人間はみんな「なんか違うんだよね」って言って振ってきた。
違うってなんだ。私は私だ。
うまくいくか、いかないか。結果はいつでも二つに一つ。
なんでうまくいかないことの方が多く感じてしまうんだろう。
振られた私をいつも慰めてくれるのは、お兄ちゃんの親友、研ちゃんだ。
三上研一、三十四歳。私の五つ年上。メタルフレームの眼鏡がすごく賢そうに見える。っていうか、実際賢い。私にはてんでわからない数学の研究をしている。名は体を表す。研究第一。理詰めに見えておひとよしの彼は、飲みに誘うと必ず付き合ってくれる。
今日も安い居酒屋。こじゃれたお店よりこういう気楽なところが好きだ。枝豆にもずくにタコワサに揚げ出し豆腐。最高だろう。ビール! ビール!
「ほんと、美蘭ちゃんは旨そうに飲むね」
「だってビールおいしいじゃん! さっぱりしたものと合わせてもよし、油ものと合わせてもよし! 神の飲み物だね!」
「まあ、旨いけど」
研ちゃんも私もザルなので、あまりペースを考えずに飲めるのが楽でいい。
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