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私のテントを見て『すごいね。自分でやったの?』と驚いていた。 自分はパソコンが出来ればいいから椅子だけ持ってきたといって、反対側の端に居場所を決めた。 今日は場所の下見に来ただけだと。 『最高だね、屋上って。』 そうだよ、そんなに高いビルではないけど、ここからの眺めは私も気に入っている。 大好きな東京タワーも少し見える。 仕事のことや懐かしい人々の話はしたけれど、お互いプライベートな話題には至らなかった。 そして屋上をシェアする日々がはじまった。 週末はいないものだと思っていたのに、来る。 挨拶程度で会話することもなく、あやととの対話に邪魔になることもない。 同じ空間にいるのを忘れるくらい普通。 むしろ規則正しいタイピングの音が心地良かったりする。 仕事の電話などはいつしてるんだろう? 気を使って外に出た時にしているのだろうか。 だけど、重なる事はないと思っていたから少しイラついた。 イラついた勢いでなんで週末も来るの?と聞いてしまった。 『結局リモートワークはいつでも出来るから仕事が途切れないんだよ~。』と大きな口で笑ってみせた。 ああ、そうだ、思い出した。 こうゆう人だった。 滅多に相手の感情に動じない。 だから遠慮なく言葉を繰り出せる横山くんとの会話は楽しかったんだ。 これをきっかけに、休憩にコーヒーを飲んだりするようになった。 しだいに心地良くなっていく一緒に過ごす時間に、戸惑う。 わかっている。 戸惑いは罪悪感だ。 あやとと出会う前の友達なんだよ。 自分の耳からも聞こえるように声にして呟いた。
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