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雨の日は嫌い。 雨の日の屋上はたまったものではない。 だけど雨の日こそ私はここに来なければならない。 雨の日こそあやとのそばにいなければ。 あの日も雨だったから。 最近はあまり泣かなくなった。 だけど雨が私を引き戻す。 テントに降り注ぐ激しい雨の音で横山くんが来たことに気が付かなかった。 どうして来たの? 雨じゃ仕事できないのに。 私がここに来る理由、知っていたんだね。 勝子が話さないわけないか。 来てくれてありがとう、かな。 でもお願い、やめて、離して。 優しくしないで。 彼が空から見てるから。 実態のある温もりに心が動いてしまうから。 約束したの、ずっと一緒だって。 浮気したら許さないってお互いに。 話すことが出来なくなったから、余計に一方的に裏切るわけにはいかないの。 私が前へ進むのは空に向かう道だけなの。 『僕は彼が引き合わせたんだと思ってるよ。 この地上で一番頼りがいがあって信頼できる僕を彼が選んで近づけたんだ。』 大きな口でニッと微笑む。 お願い、やめて。 もう確かめることのできない彼の気持ちを勝手に解釈しないで。 『勝手な解釈じゃないさ。 本当にそう思うんだ。 僕がここで君に再会した、それが、証だ。 再会した最初はただ気の毒だなと思っていた。 気になるけれど気軽に踏み込んではいけないと。 あの頃も好意があったけど、なにかとタイミングが合わなかった。 ずっと一途に思っていたわけでもない。 一緒に過ごすうちにまた好きになったんだ。 君との空間と会話はやはり心地いい。 そして笑顔が増えてきたことに、君に再会した意味が見えてきた。 彼の気持ちがわかった。 また会えてよかったと思った。 今、君はどうしたいかと聞いても無駄だろうから、やめておくよ。 忘れなくたっていいんだ。 いずれみんな空に向かう。 彼との話し合いはそれからでいいじゃないか。 そこで彼が《そんな事は思っていなかった》というなら僕は諦めるよ。 …いや、違うな、戦うよ。』 同情なんて失礼なことをする人じゃない。 私はどうしたらいいの、なんて甘えたことは言いたくない。 向けられた眼差しから逸らせない。 大きな手に包まれて息ができない。 息ができないのに苦しくないのはどうしてなの。
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