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私は今、とある国の国境付近のジャングルの中を、西に向かってひたすら歩いている。
私の名前は森村 真希。
主に非武装地帯とさてている地域の、難民キャンプ等の医療支援を目的とした国際医療支援団体として、各国政府の出資と支援のもとに設立された[STARS]という組織に、私は身を置いている。
そのSTARSが医療支援を行っていた難民キャンプをレジスタンスが襲撃したのが、5日前の事だった。
彼等は全員が銃を持って武装し、自分達に抵抗しようとする者は容赦なく撃ち殺すと、生き残った抵抗する意思が無いものを一箇所の建物内に集め、監禁した。
当時STARSの一員として現地で医療支援を行っていた私も、レジスタンスによって監禁された部屋の中で、他の難民達と共に震えながら開放されるその時を信じ、ひたすら時間が過ぎるのを待つしかなかった。
レジスタンスの要求はずばり、捉えた人々の身代金の要求である。
私がざっと室内を見渡した限り、部屋の中には難民と医療支援チームの人間が、合わせて40人程佇んでいるように見える。
そんな私達の命を、レジスタンスは自分達の金儲けの商品にしようとしているのだ。
私はそう思う度に激しい怒りに打ち震えたが、だからといって彼等に抵抗してしまっては、たちまち彼等の持っている銃で撃ち殺されてしまう。
だからここにいる間は、私達は彼等の言いなりになるしかなかった。
そんな中、事態が好転したのは二日目の夜の事だった。
レジスタンスの男達が、新たな身代金要求動画を撮影しようと、明るい焚き火の前に陣取って撮影を開始した直後。
外部から来た謎の勢力の奇襲によって、彼等はまたたくまに全滅し、それから間もなくして私達は監禁されていた建物の中から開放される事となった。
その後、私は自分達を助けてくれた人達の様子を見て、彼等がどこかの国の正規軍の人々であろうと言う事に、すぐに検討をつけた。
緑色の野戦服に、同じ色のヘルメット。
映画の中でよく見る兵士達の、そのままのイメージの姿の人々が、私達の前で目まぐるしく戦闘の後処理に追われていたからだ。
「ロシア軍の人達?」
私は彼等の野戦服の肩のあたりに付いている国旗のワッペンを見て、そう独り言をつぶやいた。
彼等の肩の辺りには、どの人を見てもロシア国旗が縫い付けられていたからだ。
「ええ。彼等はロシア軍のエリート部隊よ。スペツナズと言えば、聞いたことくらいあるでしょう?」
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