二.顔合わせ

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「御免下され。首長殿はおられますかな。」 玄関先から聞こえたのは、歳を重ねた男性の声だ。 「あら、ちょうどいいところに来たわね。紅悠様、ちょっとお待ちくださいね。」 圭はそう言って立ち上がり、いそいそと部屋を出て行った。 少ししてから、圭に伴われて部屋に入ってきたのは、顔中に深い皺を刻んだ精悍な男性だった。 「紅悠様にも、紹介しておきますね。村の組頭で、“(ゲン)”さんっていうの。律様のお世話係ってところかしら」 「圭殿、ワシは首長の補佐役であって、お世話係では」 弦は圭に向けて顔をしかめてみせてから、紅悠に向き直って一礼する。 「お初にお目にかかります、紅悠殿。以後お見知りおきを」 「こちらこそ、よろしくお願いいたします。」 紅悠も深く頭を下げた。 「ねぇ弦さん、紅悠様が龍族のことを勉強したいんですって。私、弦さんが先生として適役だと思うのよ。」 「やや、ワシは首長殿から租税資料を預かって、王宮に届けなければ…」 眉を曇らせる弦だったが、圭はからからと笑って見せると。 「どうせまだまだ出来やしないわよ。待ちぼうけ食らってる間に、ね?」 「…やれやれ。仕方ない、書類が出来るまでの間だけですぞ」 渋々ながらも頷いた弦に、紅悠は再び、よろしくお願いしますと頭を下げた。
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