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夕餉も律は自室で仕事をしながら摂るらしく、紅悠は一人分の膳を律の部屋まで運び、自分は部屋に戻って食事を済ませた。
(圭様も弦様も、優しい方で良かった…)
台所で夕食の片づけをしながら、紅悠は小さく溜息を吐く。
(旦那様とは、ほとんどお話しできなかったけど…)
圭が言っていた通り、律は一日を通して仕事にかかりっきりのようで、滅多に部屋から出てこない。最も、皇帝の命で結婚させられた狐族の娘など、はなから興味はない、とも考えられるが…
翌朝の朝食の下準備まで終わらせて、そろそろ床に就こうと部屋へ戻る途中、律の部屋の襖の隙間から、光が漏れ出ていることに気が付く。
(…お仕事、まだ終わらないのかな)
こんな遅い時間まで、煌々と灯る明かりが気にかかりながらも、紅悠は自分の部屋へと戻っていった。
凍て付く睦月の夜、空には澄んだ満月が昇り、広い庭を照らしている。
――王家の娘に生まれた以上、政略結婚もある程度は覚悟していた。
まさか種族を超えて婚姻を結ぶことになるとは想像もしていなかったけれど…嫁いだからには、自らの役目を全うするのみだ。
眩い月からそっと目をそらし、紅悠は静かに襖を閉めた。
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