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4 夏のキャンプで
文化祭が終わると、期末テスト、球技大会と、あっという間に一学期の残りの行事が過ぎてゆき、南倉地方に本格的な夏が訪れた。
どこまでも続いているかのような紺碧の大海原。その上に、澄み切った水色の空と真っ白な入道雲。
丘の上の草原はいよいよ青さを増し、海からの爽やかな風が、その青にさざ波の足跡を残して山の方へと吹き上がっていく。
南倉から峰が浦にかけて伸びる砂浜には、海水浴場や波乗りスポットが点在していて、海の家も所狭しと軒を並べる。
梅雨が明けると同時に、シーズン到来を待ちかねていたサーファーや海水浴客たちが、今年も南倉地方に夏を運んできた。
七月の終わり。南倉高校も待ちに待った夏休みに突入していた。
一か月ちょっとのバカンスシーズンは、長いようであっという間だ。だから、どこの部でも、夏休みに入るや否や、先を争うかのように旅行に出かけたり合宿に入ったり、普段はできない大きなイベントに取りかかる。
宏の知っているだけでも、気象研究部が、最近の地球温暖化の実態調査と称して北海道まで足を伸ばすそうだし、吹奏学部は、高齢者施設や障害者施設などで慰問演奏を行う旅に出るそうだ。
また地理部では、昨年のM島近海の海底火山噴火や関連する群発地震のメカニズムを詳しく調べようと、現地の大学や研究機関に頼んで勉強会を開いてもらうとのことだし、山岳部も、夏山を思い切り満喫しようと、すでに北アルプスへと出発したとのことだ。
文芸部では……
夏休みは各自で作品の執筆に当てるというのが例年の過ごし方なのだが、今年あたりは何かちょっとしたイベントでもやりたいね……そんな声が上がり、一泊のキャンプに出かけることになった。
行き先はK山公園キャンプ場。南倉地方のシンボル、K山の麓に整備されたキャンプ場だ。
ひたすら机に向かうのもいいが、たまには趣向を変えてこういう活動もいいんじゃないか。創作活動の糧にもなるだろうと、顧問のおじいさん先生も積極的に支援してくれたのだ。
宏や理恵子、それに他の部員たちも、文芸部始まって以来のイベントに、胸を躍らせ、その日が来るのをワクワクしながら待っていた。
ところが……そのキャンプは、宏にとって思いがけない展開を見せることになる。
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