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「そもそもこの機械はちゃんと役に立つんだ! センサーがついてて、この部屋に人が入ってくるのを察知すると思わず笑ってしまうような変な音を流してくれる!」
「どこが役に立つんですか?」
ノアの声は冷め切っている。
「今日は私、とっても機嫌が悪いんですよ。あまりにも精神年齢の低いちょっかいを出さないでください」
「機嫌が悪い……?」
きょとんとして首をかしげるVに、
「起きたら机の上に飲みかけのアルミ缶が置いてあって食べかけのミカンが乗せられてたり、ピンクの下手なハートが描いてある紙が破けて床に散らばってたり……。さらには廊下に出たらぐしゃぐしゃの黄色い折り紙がいきなり大量に落っこちてくるし、鳥のぬいぐるみが床にめりこんでるし、なんか炭みたいな黒焦げの物体がお皿の上に置いてあるし」
ノアはつらつらと朝から起きた怪奇現象について語る。
「動物たちの様子を見に広間に行ってみたら、巨大扇風機が置いてあって布団がバサバサぶんぶん部屋の中をすごい勢いで飛び回ってたときの私の気持ちが分かりますか?」
「それはもう、大爆笑したんだろうね」
「怒りに任せて布団を引き裂きました」
「あれ」
Ⅴの頬をつーっと流れる冷や汗。
ノアはナイフのように鋭い瞳でⅤをじっと見据える。
Ⅴがだらだら汗を流す。
「私は昨日の夜から今日の朝までは安らかに気持ちよく寝ていたんです。なのに起きだしてみたらあっちこっちがおかしくなって……この研究所にたどり着くには険しい山道とあなたがしかけた性悪トラップを突破する必要がありますから、私が何もしていないとなると、心当たりは一人しかいなくなるのですが」
「……」
「言い訳があるなら聞きますよ?」
絶対零度なんて生ぬるい言葉では表せない笑顔で、にっこにっことVを見つめているノア。
聞きますよ? と言っているが、絶対「言い訳しないでくださいね」という裏の意味がある。
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