第二話 絶望の先

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第二話 絶望の先

 「まあ良いさ、君の議員人生も残りわずかだ。君は補欠選挙の当選者だが、残念ながら、今後一年以内に、確実に衆議院は解散する。これは、総理大臣と私が内々に決めたことだ。一年後、与党は、君を公認しないことも、内々で決めている。新人議員を立てる用意がある。せいぜい残り一年を、楽しみたまえ。」 ー石川幹事長の部屋を後にした私の脳裏には、この言葉が何回もループしていた。私はどうしたら良いのだろうか。絶望の淵に立たされた気分だ。  だが、既に答えは出ている。石川の悪事を暴き、世間の信を問う。しかし、石川に対峙するには、こちらに力がなければならない。彼に勝る力は何だ。一人の人間が石川に敵うには、総理大臣になるしかない。それは無理だ。一人では無理か。  なら、複数人ならどうか。例えば、ある少年名探偵漫画では、大いなる敵の前に、探偵、FBI、公安警察、MI6、CIAなどの異業種が集まり、欺いたり、出し抜いたりしながら、敵を倒そうと企てる。例えば、こんな集まりがあれば、世間から見たら世直しをしているように見えるし、失敗してもカバーし合うことができる。目指すなら、複数人の専門家で潰しにかかるか。  では、誰を呼んだら良いのか。何人なら勝てるのか。まずは、あの少年名探偵のように、探偵が必要だろう。裏稼業として、動いてくれることを期待しての登用だ。あとは、警察がいてくれたら、捜査に使えるし、内部情報ももらえるはずだ。医師を仲間にすれば、怪我をした時、命拾いになる。武田信玄が戦場に医者を連れて行き、怪我しか武士を助けた歴史からも、その大切さは明らかだろう。法律家がいれば、法律の抜け道や違法か否かの判断もつく。弁護士も雇おう。  ところで、この裏稼業、資金源はどうしようか。財界に顔が利く財界の人も必要かもしれない。資金面でのバックアップをお願いしたい。また、この時代、パソコンやサイバー関係に長けている仲間がいると、何かと役に立つだろう。最後に、どうしても仲間に入れたい、昔の教師仲間がいる。  探偵、刑事、医師、弁護士、財界、IT、教師、そして代議士の私。8人の専門家集団を結成しよう。目的は、石川の討伐だが、普段は、依頼は何でも受ける「よろず屋」として、依頼料と引き換えに、仕事をしよう。 ーホワイトボードに書きながら、情報を整理した青木。絶望の先に見えた彼の人集めが、始まる。
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