みちのみち

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 その夜、ゆめを見た。わたしの前にはどこまでも続くみちがある。でも、どこに続いているのが分からないって、何だかこわい。だから、わたしは一歩も歩くことができなかったんだ。  次の日は、ようちえんはお休みだった。だけれども、お父さんとお母さんはお仕事で家にいない。だから、わたしはお部屋でお人形遊びをしていた。いつものように、お人形さんたちとおままごとをしようとしていた……その時だった。 『ドタン!』  何かがたおれるような音が居間から聞こえた。何だろう……そう思って居間をのぞいて、わたしは思わずさけんだ。 「おじいちゃん!」  わたしのかおはサァッと冷たくなっていった。居間でおじいちゃんが、むねをおさえてたおれていたんだ。わたしがかけよると、苦しそうに口をあけてうなり声を上げていた。 「だれか……!」  わたしはかおを上げて……だけれども、家にはお父さんもお母さんもいなかった。 「だれか……お願い!」  わたしは家をとびだした。一人で外に出るなんて初めてのことだったけれど、こわいだなんて考えている間もなかった。  みちに出て、わたしは走った。だれか、だれか……わたしのおじいちゃんを助けて!  どのくらい、走っただろう。まわりに広がる田んぼとか畑とかを通りすぎて、わたしは町に出た。それは、わたしの知らないところ。  こわい……だけれども、わたしはおじいちゃんがたおれてしまったことの方がもっとこわかった。  目からはあついなみだが次から次に出てくる。だけれども、わたしはだれかに会うまで、ずっと走り続けた。 「あれ、どうしたの?」  やさしいその声にかおを上げると、お姉さんがこしを下ろしてしゃがんで、心配そうに首をかしげていた。知らない人……だけれども、悪い人じゃなくって。泣きじゃくっているわたしを心配して声をかけてくれている。 「おじいちゃんが……わたしのおじいちゃんが……」  わたしの目からは、さっきよりももっともっとなみだがあふれ出して、言葉がうまく出てこなかった。 「うん、うん。おじいちゃんが、どうしたの?」  そのお姉さんはわたしの頭をそっとなでて、言葉が出るのをまっていてくれた。 「おじいちゃんが、たおれたの。すっごく苦しそうで……」 「それは大変!すぐにお医者さんをよばなきゃ。あなた、お名前は?」 「わたしは、みち。北川みち」 「北川みちちゃん……聞いたことがある名前だわ。そうだ、あなた……みのりようちえんに通ってる?」 「うん」 「そっか……お母さんが、よくあなたのお話をしてる。ちょっとまってて。お母さんに電話して、あなたの住所、聞いてみる」  そのお姉さんは、ようちえんのなみ先生のおうちのお姉さんだったみたいだ。お姉さんは先生に電話をかけてわたしの住所を聞いて、きゅうきゅうしゃを呼んでくれた。そしておじいちゃんはきゅうきゅうしゃで病院に運ばれたんだ。  病院でまつわたしは心配でたまらなくって、お母さんにだかれながら、ずっとないていた。ないて、ないて、いつの間にかねてしまってた。  お母さんのうでの中で、わたしは、ゆめをみた。 わたしの前にはどこまでも続くみちがある。わたしはおそるおそる、そのみちに一歩だけ足をふみ出した。すると、わたしの前に広がるみちは、とたんにキラキラとかがやき出したんだ。
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