72人が本棚に入れています
本棚に追加
「待て待て! 話は最後まで聞け!
お前にはこれからカイナスギルの魔導学園に通ってもらう!」
カイナスギルと言えば、この王国の辺境のそのまた辺境の地だ。
尤も今住んでいるジモッティも十分に辺境なのだけど、他国との境である要衝の地だ。
しかし、カイナスギルはこの王国の端であり、どの国とも隣接していない。
海にはつながっているが、漁港として発展しているわけでもない。土地としての重要度も極めて低い場所なのだ。
さて、ここで私が何故そんなことを知っているのか説明しよう。
あれはそう、珍しく父に連れられて市場に行ったときのことだった。
父が市場の商人に値切り交渉をしている傍らで、旅の芸人がネタを披露していた。
その道端で、幼い頃の私はそのネタを興味深く見ていた。
「カイナ! スギル! カイナ! スギル!
みんなが知ってる辺境の地! 辺境の地!
市民の主食は! 森の樹液!! 市民の主食は! 森の樹液!!」
……あの個性的なリズムネタは、私の耳にこびりついて離れない。
そのせいで「カイナスギルは辺境の地」だと、強く印象に残っているのだ。
最初のコメントを投稿しよう!