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「おい、てめえ! なんで手を降ろしてやがる!?」
親分の巨体も喚く声も、私にとっては恐ろしくない。
私が唯一恐れているのは、『恐れられること』。
私の力を見た者は、誰しもが私を恐れるようになった。
――あれはそう、私が5歳のときだった。
父が大事にしていた壺を誤って割ってしまった私は、『お仕置き』として古びた倉庫に閉じ込められた。
私は必死に謝ったのに、父は決して許してくれなかったのだ。
暗くて、狭くて、薄汚れた空間に、ただひとり押し込められた私は不安に押し潰されそうだった。
どうにか外に出ようと、必死にドアノブを回したけれど、扉はびくともしなかった。
唯一の窓も鉄格子が取り付けられており、外へは出られそうになかった。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……!
ここから出して! お願い出して!!」
倉庫の外に向かって叫び続けても、誰も助けに来てくれなかった。
父が誰も倉庫に近付くなと命じていたに違いない。
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