第4話『黒衣の魔女』

5/7
前へ
/49ページ
次へ
 がたがたっ!!  やがて声も枯れ、涙も流し尽くそうかというとき、倉庫の奥から小さな物音が聞こえてきた。  幼い私は恐怖で身体が硬直していたけれど、なんとか顔だけは振り返って、その物音の正体を確かめた。 「な、何……!? なんなの!?」 「ぢゅぅうううぅううぅうう!!」 「ひぃっ!?」  それは小さな灰色のネズミだった。  もし噛まれれば病気になってしまうかもしれないけれど、今にして思えばそれほど恐れるものではなかった。  むしろネズミも、私が大声を出してしまったせいで怯えてしまったのだろう。  興奮したネズミは私に向かって突っ込んできた。 「こ、来ないで……! こっちに来ないでぇえええぇえええ!!」  私はネズミに向かって、思いっ切り両手を突き出した。  ……そして、そのとき不思議なことが怒ったのだ。  なんと私の手のひらから、大きな炎の玉が生み出され、それがネズミに向かって飛んでいったのだった。 「な、何これっ!?」  その炎はそのまま倉庫を燃やし尽くした。大惨事だ。  私はと言えば、火事に気付いて駆けつけてくれたドロシーになんとか助けてもらえた。
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!

72人が本棚に入れています
本棚に追加