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やれやれ、痛い目に遭わないと分からないのかしら。
そっちがその気なら、こちらももう遠慮はなしだ。
私は構え直す。今度は地面ではなく、直接相手を狙うように手のひらを向けて――、
「参りましたぁあああああぁああ!!」
「………………はい?」
目の前には、土下座をするスキンヘッドの大男。
一瞬、私は何が起きたのか分からなかった。これってまさか降参?
「お願いします! 何卒! 何卒命だけはお助けを!!」
……降参じゃなくて命乞いだった。
いや、初めから命を取るつもりなんてないんだけど。
まったくもう、私は確かに悪役令嬢だけど、これじゃどちらが悪党か分からないじゃない!
「俺たちゃ、田舎から出てきてどうにか家族を養う金が欲しかっただけなんです……。
あなたに慈悲の心があるならば、どうか、どうかこれくらいでお見逃しくだせえ!!」
「如何にも嘘臭い話だけど……、もし本当なら傭兵か用心棒でもやりなさいよ。
多少は腕に自信があるから、山賊なんかやってるんでしょう?」
「へへー! 仰る通りで!!」
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