72人が本棚に入れています
本棚に追加
「まあ私としては今すぐ立ち去ってくれれば、これ以上はーー」
私がその台詞を言い終える前に、奴らの身体はすでに動いていた。
「よし、撤退だ! お前らずらかるぞ!!」
「「「お、おおー!!」」」
そう言って山賊たちは姿を消していった。まさに脱兎のごとくだ。
……逃げたわね。尻尾をとぐろに巻いて。
まあ、それよりも私としては、それよりもペチュと御者さんのほうが気になった。
「ペチュ、もう大丈夫よ」
私はペチュのほうを見ないで、そう口にした。
きっと彼女は今も怯えているはずだ。それは山賊にじゃなくて、私に対して。
こんな"魔女"なんて恐れて当然だ。私は彼女の発するどんな言葉も甘んじて受け入れよう……。
時間に直せば数秒のことでも、彼女が口を開くまでの時間は永遠のように感じた……。
「す」
……す?
「っごーーーい!! すごいよすごいよ、フローちゃん!
今のってフローちゃんの魔法だよね!? こんなにすごい魔法、初めて見たよ!!」
「へ? そ、そう?」
それは予想外の反応だった。
最初のコメントを投稿しよう!