第1話『とある"魔女"の追放』

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 いや、むしろ嫌味な家族から冷遇される日々から抜け出せると思うと、安堵するような気持ちが湧いてくるくらいだ。  たとえこの先、孤独が待ち構えているとしても構わない。私はただ平穏に暮らしたいだけなのだ。  自室に戻った私は父、――だった人に言われた通りに、旅行用の鞄に荷物を詰め込み始めた。  そうは言っても、持っていくものなどせいぜい着替えとそれ以外の日用品、それからお気に入りの小説くらいなものだった。  だって私にはどうしても手放せない"大切なもの"など、ひとつ足りとも与えられなかったのだから。 「……これは、どうしようかしら」  ――コンコン。  私がとある本を手に取り、それを鞄に詰め込むか迷っていると、がらんとした飾り気のない部屋にふとノックの音が響いた。 「どうぞ」  誰が訪ねてきたのかは知らないが、別に誰でもよかった。どうせ誰であろうと、明日には全く無関係の他人になってしまうのだから。 「失礼させていただきますわよ、フローリア」 「ドロシーお姉様」  扉が開かれるとともに、鼻につく香水の臭いがきつく漂ってくる。
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