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如何にもな紫色の縦ドリルをぶら下げたその女は私の姉、……と言っても彼女は正室の子供で私は側室の子供なのだけど、ドロシーだった。
一応まだお姉様と呼んでおくことにする。齢は私の8つ上だ。
フリフリのドレスで気品あるその姿は、短い黒髪で陰気な私とは似ても似つかない。
半分とは言え、同じ血が流れているとは信じ難いほどだ。
「話は父から聞きましたわ。明日の朝にはここを出ていくのでしょう?
荷物の支度をしているところに悪いですわね」
「別に忙しいわけじゃないわ。
ただ、この『ひょっとこ太郎、夜な夜なキャバレーに行く』を持っていくか悩んでいただけだから」
「そんな本置いていくべきですわ!? 内容知りませんけど!!」
……結構面白いんだけどな。ひょっとこ太郎が舞台で華麗なタップダンスを披露して観客を湧かせるシーンとか。
「ふぅ……、そんなことより、あなたはそれでよろしいんですの?
このローレンス家から"追放"だなんて」
「何も問題ないわ。私はずっとこの家も、父のことも嫌いだったのだから。
……そして3人の姉のこともね。ドロシーお姉様」
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