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「あら、これでもわたくしとしては、あなたを可愛がっていたつもりなのだけど」
そんなことは分かっている。
彼女は彼女なりに、私に愛情を注いでくれた。だけど、それでも――。
「それよ。その憐れむような瞳で私を見るのが嫌いだった。
もしもあなたが惨めな私を見て高笑いするような女だったのなら。
私はなんの心残りもなく、この家を去ることができたというのに」
私がそう恨めし気に呟くと、突然彼女は私が望んだ通りに高笑いをした。
「あーはっはっは!!」
その嘲笑には確かに侮蔑の意味は込められていた。
だけど、それは私が望んだ侮蔑とは少し旨趣が違うようだった。
「このわたくしに、『邪魔者が消えてせいせいした』と、そう嘲笑って欲しいというわけ?
ごめんあそばせですわ! それじゃあ、まるでわたくしが悪役令嬢みたいじゃありませんの。
わたくしはこのローレンス家を継ぐ高貴な令嬢。勘違いしないでくださいませ!」
ドロシーお姉様はそんな言葉と裏腹に、凍てつくような瞳で吐き捨てた。
「悪役令嬢はあんたよ、フローリア」
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