裏ゲームで数多の男たちが彼を辱める②

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裏ゲームで数多の男たちが彼を辱める②

遠藤との昼食後、相変わらず、まめに小向へメッセージを送りながらも、肝心なことは聞けないまま。 そう仕事が忙しくなかったものを、すっかり疲れきって、帰宅したなら、ソファに倒れこんだ。 そのまま寝ようとして、うつ伏せから仰向けになったところで、テーブルにあるノーパソのランプが、赤くちかちかしているのが目に入った。 「電源落としていなかったっけ?」と開いたところで、黒い画面に浮かびあがった「シンドローム」との白い文字。 ぎょっとし、閉じようとして、思いとどまり、ソファから下りて座り、あらためて見てみれば、黒い画面に病院が浮かびあがり、おどろおどろしい音楽が鳴りだした。 すこしして「ゲームをするには必須の項目をご入力お願いします」との文言と共に、入力フォームが表われて。 生唾を飲みこみ、IDとパスワード、ハンドルネーム、クレジットカード情報を入力し「ゲームスタート」のボタンを押した。 次は「どちらでプレイをしますか?」と「プレイヤー」「オーディエンス」の選択。 「オーディエンス」のボタンを押すと、病院が薄れていき、BGMは悲愴なオルゴールの曲になって、プレイヤーのハンドルネームと「ネコかタチか」「進行具合」「オーディエンスの数」などの基本情報の一覧が露になった。 いくら、スクロールしても尽きそうにないほどの、プレイヤーの量。 それぞれのプレイを見守っているのが、百人を超えていて、オーディエンスの総数も半端ない。 延々に連なるハンドルネームを見て、それまで、いささか熱に浮かされたようだった頭が正気になった。 「もし、小向がいたとしても、本名でやっていないだろうし、この中から見つけだせないだろ」と思い直し、「ゲーム終了」のボタンを押そうとしたとき。 「幸至太」の名前が目にいった。 「しいた」と読むのを知っているのは、小向の名前も同じだから。いわゆるキラキラネームだ。 アニメオタクの親馬鹿ならぬ、馬鹿親につけられたそうで「ころあいを見て、改名したい」と当人はいい迷惑をしている。 営業先で話の種になるといって、ありたがっていないし、正直、人に呼ばれるたび、虫唾が走るそう。 はじめは、そうと知らずに呼んでしまい、事情を聞いて謝ったのが「お前だけは、いいよ」と強がってもなさそうに、笑ってくれて。 以来、二人きりのときは、優越感に浸って、得意に口にしていた、曰くつきの苗字。 「幸至太のプレイルーム」のリンクをクリックすると、詳細な情報が表示された。 幸至太は、真面目一辺倒でお人好しな医師であり、ノーマルの無自覚ネコ。 相手は背が高く筋肉質と、見た目がガテン系ながら「ピーターパン症候群」のNくん。 日中はまともで、筋トレに励む、人懐こい好青年なのが、日が暮れてから、子供返りをして、なにかと医師に駄々をこねたり、すがりついて泣いたりする。 ゲームの進行具合は五十パーセント。オーディエンスの数は一万人弱。 「幸至太のプレイルームに参加する」のボタンを押したところで、「参加料は一万円。選択肢の投票は一回につき三千円」と注意書きがポップアップ。 迷わずに「参加する」を選ぶと、チャリーンと課金の効果音がしてから、プレイ画面へ。 画面は半分に区切られ、片やプレイ中継、片やオーディエンスのチャット。 チャットの内容に目を通す間もなく「選択イベント発生」のボックスが出現。 チャット画面に、音声つきの文字が流れる。 「このあと、真夜中になって、いつものようにNくんは、病室に幸至太先生を呼びます。 しかし、いつもと何かが違うようです。 『おっぱいが恋しい。おっぱいを飲ませて』とせがんできます。 さて、幸至太先生はどうするでしょう?」 その質問の下に、ばーっと選択肢が並べられる。 おおよそ、三十個くらい。 「男からお乳はでないと、あしらう」と冷たい対応から「さあ召し上がれと、乳首をつまんで見せつける」と積極的なアプローチまで、さまざま。 この「幸至太」が本人とは限らなかったが「小向ならどうするだろう?」と考える。 詳細情報に「真面目一辺倒でお人好しな医師」と書かれていたとなれば、おそらく、羽目を外しきれていないのだろう。 と見て、「代わりに、蜂蜜入りホットミルクを持ってこようと、宥める」を選んでチャリーン。 制限時間のカウントがゼロになったところで、多数決の結果が発表される。 俺が選んだのと「恥じらいながら、胸を吸わせる」「そんなに見ないでと、胸を隠す」だ。 この三つが、プレイヤーの画面に反映されると「宥める」「胸を隠す」で行ったりきたりして、前者がクリックされた。 とたんに「やっぱ、幸至太さんは、むっつり!」「逆にやらしー!」「くっそ!めっちゃ犯したい!」と膨大なコメントが流れる。 「こいつら・・・!」と画面をつかみ、歯軋りしたところで、「リアクションイベント発生」。 その間もプレイは進行していて、隣の画面では、幸至太先生が宥めている最中。 今度は「お乳の代わりに、すすめられたホットミルクを、Nくんはどうするでしょう」というもの。 遠藤からは「選択イベント」についてしか聞いてなく、「リアクションイベント」なんて、違うパターンがあるとは、初耳だ。 「これじゃあ、ほんとに擬似セックスだ」と開いた口が塞がらないうちに締め切られ、多数決が集計された。 上位三つは「抱きついてシャツ越しに乳首を吸う」「先生のおっぱいがいいと、胸を揉みしだく」「押し倒して、シャツを破きしゃぶる」。 どれも、強制的なリアクションで、一番投票数が多かったのは、もっとも過激なもの。 プレイ画面では「すぐにホットミルクを作ってくるから」と幸至太先生が、腰掛けていたベッドから立ち上がろうとした。 そのとき、顔を手で覆って、泣きじゃくっていたNくんが「なんで、そんな意地悪するの!」と腕をつかんだ。 ベッドに引き倒し、腰に馬乗りになると、筋トレ効果で肌着ごとYシャツを引き裂く。 「幸至太先生、は、はあ・・・はあ、幸至太先生・・」と荒い気遣いの幸至太くんは、裸に白衣を羽織っているような有様を、しばし眺めた。 驚きから覚め「Nくんだめだ!」と叫ぶも遅く、乳首をしゃぶられ、もう片方も指でこねられる。 感度は良好のようで、しょっぱなから「あ・・・だ、め、ん!ああ、やあ、ん、や、や、あん!」と喘いで、身もだえ、よだれを垂らす、幸至太先生。 「赤ん坊がおっぱいを吸うみたいに、手加減なく、無我夢中に乳首をいじってくるなんて・・・! それなのに痛くないし・・・・こんなに求められたら、もう、私は、私は・・・。 ああ!Nくんが勃起している。 固くておっきい・・・!」 心の声にしろ、エッチだ。 しばらくは、課金イベントがなく、胸を揉まれ吸われ、勃起を押しつけられ、いやおやあんあん鳴く、幸至太先生を眺めつくすことになった。 あらゆる角度から視姦するような画像が流れて、オーディエンスは見惚れているのか、抜いているのか、チャットは静かなもので。 オーディエンスが絶頂を迎えたころを見計らい「リアクションイベント発生」。 お題目は「Nくんは先生が勃起しているのに、気づきました。さて、どうしますか」。 まあ、そりゃあ、「擦り合わせる」「扱く」「しゃぶる」と段階をすすめるのほとんどで「あえて無視する」と別口のアプローチの仕方もありつつ、一つだけ、まったく異色なのが混じっていった。 「幸至太先生と呼びかけ、口付けをする」なんて、甘ったるく、どこか切なげなもの。 その選択肢を目にしたとたん、課金せずにパソコンを閉じて、コンセントを引っこ抜いた。 にわかに記憶が甦ったのだ。 少し前に、俺の家で、小向と酒を飲んでいて、悪ふざけをしたのを。 すっかり酔っ払って、ご機嫌になった俺は「ママーおっぱい吸わせてえ」と抱きついた。 実際には、小向と俺、さほど体格や筋肉量に差がないとあって、「やめろ」「やりすぎだ」と暴れられたことで、乳首をしゃぶることは叶わず。 それでも、口寂しいのを、どうにかしたくて、あらためて顔を向かい合わせ「幸至太」と低く囁いたなら、口付けをした。 のを、酒のせいで、覚えていなく、たった今、ゲーム視聴がきっかけか、すべて思い起こして。 しばし、額に手を当て、深々とうな垂れていたのを「ふん」と鼻息を噴いたなら、スマホを取りだし「今から、家に行く」とメッセージを送った。 既読がつきつつ、返信がこなかったが「現実に抱いてやる」と打って送信し、立ち上がる。 コンセントを抜いても、充電式なので、ノーパソにはゲーム画面が流れつづけているのだろう。 俺を引きもどそうとするかのように、赤いランプがちかちかしていたものの、鍵を持ったなら、見向きもせず、一目散に玄関へと向かったのだった。
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