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泣かない俺を抱いて②
翌日、いつも通り、幼稚園に迎えにいくと「ソラお兄ちゃん!」と走ってこようとしたカイトに「ごめんね、ちょっと、ソラくんと話したいことがあるから、待っていてくれるかな」と保育士がとどめた。
で、すこし放れたところで、耳打ちしたからに「カイトくんのお腹に、大きな青痣が・・・」と。
不安そうに見つめるのは、俺にでなく、ここにいない、ヒロシや母親に向けてだろう。
日々、保育士からは、よくない知らせが聞かされるとはいえ、目に余る痣や怪我について指摘されたのは、初めて。
すくなくとも、まだ習慣的になってなく、継続性も見られない。
だとすれば、早計に判断をしたくなかったし、保育士も同じ考えだったのだろう。
「今日、ヒロシに話してみます」と応じれば、青白い顔をしつつ、肯いてくれた。
たまにカイトと遊びにいく、俺の叔母宅に預けて、バイト先の物流センターに向かった。
が、ヒロシは休みという。
家にいったところで、インターフォンに応じず。どうにも胸騒ぎがして「窓を割るか」と思いかけ、ドアのノブに手をかけたら、回って。
ドアをすこし開けただけで、匂ってくる、鼻が痺れるような酸い腐臭。
鼻を慣れさせてから、開けてみれば、案外、床が見えないほど、物が散乱していないとはいえ、ぱんぱんのゴミ袋が所狭しと並べられている。
ゴミ袋だらけながら、一応、空けてあるような細い道筋を辿って、居間を覗くと、ゴミ袋に囲まれたソファにヒロシが寝そべっていた。
タオルケットをかけて、額には冷却シート。
「風邪を引いたのか」と顔を覗き込もうとしたら、寝入っているように見えたのが、とたんに目を見開いて「家に入るなって、いっただろ!」と間髪いれず、怒鳴りつけてきた。
発熱して寝込んでも「おふくろが、他人を家にあげるなって」との命令に背けないらしい。
道理も糞もない、気分屋の親のルールに従うなんて。
と、正直、呆れつつ、喧嘩をしにきたわけでないから「でも、お前、キリトが・・・・」と起き上がろうとしたのを、とどめようとした。
その手を「うるせえ!」と跳ねつけられ、ついでに胸を押される。
突きとばされるまま、ゴミ袋の山に埋もれつつ、すぐに起き上がらず、無言で見上げたら、舌打ちをして目を瞑り、力なくソファに倒れた。
「もう児童保護施設とか、なんなら警察に通報しろよ・・・そのほうが、いっそ楽になれる」
ゴミ袋の山に倒されても、かっとならなかったのが、その言葉は聞き捨てならず。
鼻息を噴いて、起き上がったなら、そのままの勢いで口づけをした。
びくりと、頭を揺らしながらも、今度は突き放そうとしないで、むしろ首の後ろをつかみ、舌をねじこんでくる。
渇ききった喉を潤そうとするように、唇を密着させたまま、口内を隈なく舐めまわし、舌をからめとって吸いつき食んだ。
酸欠で目が回りだしたころ、唇に噛みついて、赤い唾液の糸を引きながら、やっと唇を放してくれて。
血走った目をして、口端から赤い涎を垂らしつつ、首をつかむ手を震わせている。
鼻がつきそうな距離で、飢えた肉食獣に凄まれているようながら、怯えることも、逃げることもなく「大丈夫」と火照った頬を撫でた。
「俺は泣かないから」
ヒロシが目を剥いた、次の瞬間、獰猛に襲いかかってきて、また俺をゴミ袋の山に埋れさせた。
噛み千切らんばかりに、首に歯を食いこませ、シャツの裾から片手を入れて、もう片手でベルトを引きちぎるように抜く。
乱暴に雑に、肌蹴させ、脱がせて、体中を撫でて引っかき揉みこみ、舐めて吸いついて噛みついた。
手で触れた頬は熱かったものを、全体的にはひんやりとしていて、そのせいか、人肌を求めるように、休まず手を滑らせ、体をすり寄せてくる。
貪るように全身まさぐられて「は、あ、あん・・・ああ」としきりに鳴いて、たまらず勃起させたのも、体をひっくり返されるまで。
先走りで濡れただけのそこに、そそり立った固いのがあてがわれ、「まっ」て、と制止は間に合わず、後ろから貫かれた。
ただただ痛くて、切れて血が流れているのが分かりつつ、吐きそうな胸糞悪さに歯を食いしばり、暴力的な揺さぶりを四つん這いで受けつづけた。
股が裂けそうに、荒々しく突っこまれたなら、体内に注ぎこまれ、息つく間もなく、仰向けにさせられて「もう一回」と。
尚も目をぎらつかせて、息荒く、顔に涎を垂らすのを「中のを、ださせて」とどうにか、宥めて、ヒロシのをしゃぶりながら、ヒロシの精液を掻きだした。
が、途中で堪えきれなくなったヒロシに、床に叩きつけるように押し倒され、開脚を恥ずかしがる暇もなく、忙しい抜き差し。
体内に残っているのを、太いので押しあげられては、圧迫感が凄まじく、腹が破裂しそう。
もともとの痛みも混ざって、失神しかねなかったものを、萎えたのを扱きだされては、さらに拷問のようだった。
それでも「やだ」「いや」と声を上げも、首を振ろうともせず、痛みだけでなく、羞恥心に虐げられながら、つづけて二回、注ぎこまれたのを、歯噛みして飲みこんで。
カイトを蹴るに至るまで、追いつめられていたのが、すこしは、息抜きできたのだろうか。
ゴミ袋の山に埋れつつ、深く息を吐いたカイトが、すがるように俺に抱きついてきた。
疲れやストレスから、発熱しただろう体は、でも、肌を合わせて伝わる、汗ばんだ火照りや、重い鼓動が快い。
耳にかかる息は、もう獣じみてなく、安堵したように、ゆっくりと胸を上下させている。
指先まで痺れて、身動きできなかったのを、なんとか腕を上げて、腰に手を回したら「う、うぐ」と呻いた。
合わさる頬に冷たさを覚えたからに、腰をぽんぽんとして「俺は大丈夫だけど」と囁く。
「カイトが、自分のために、お前が泣いてくれないって泣いてた」
息を飲んで、呻くのもやめる。
あらためて、ヒロシが胸を痛めているのが分かりつつ、あえて手加減せず「今、泣くくらいなら、カイトの前で、泣いてあげろよ」と忠告をした。
「俺は泣けないんだから」
その一言を皮切りに、鼓膜を破らんばかりに泣き喚きだした。
「ごめん」「ごめん」と泣きじゃくって、がむしゃらに、しがみついてくるさまは、カイトと変わらず、いたいけで、カイトに対してと同じくらい、愛おしさを覚えないでいられなかった。
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