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4.昨日～愛の劇場～
「酷いのは私に冤罪を被せようとする貴方達です」
「「「「「「なっ！？」」」」」」
何故そこで驚くのでしょう。
大勢で寄ってたかってか弱き乙女を糾弾しているのですよ？それも冤罪で。自分達が加害者という意識はないのかしら？きっとないのでしょうね。全く。そんな驚愕した顔で見られても困ると言うもの。貴方達の思考回路が不思議でならないわ。
「な、なんて人なの！わ、私は……あ、貴女を、ゆ、許そうと……」
許す？何を？話を更にややこしくしてどうしようと言うのかしら？
「義姉上！貴女には人の心が無いのですか！！」
「オットー、私の義弟である貴方が何故そちら側にいるのかしら？」
「僕はもう貴女にはついていけません！貴女のような人を姉だとも思いたくない！！」
「あら、それなら今から私達は他人ね。私も餌を与えるなら主人さえも裏切る駄犬は必要ないわ。貴男の新しい飼い主はユベール様かしら？それとも貴男の背後にいる少女かしら？」
「貴様！！！」
短気なユベール王太子が拳を振り上げ、今にも殴りかかろうとした瞬間、その腕を抱きしめて行動を抑え込んだのはクロエでした。
「だ、ダメです！」
「クロエ！何故止めるんだ！？」
「ユベール。どんな酷い人でも殴ってはダメ。暴力はいけないわ」
「クロエ……君という人は……」
さっきまでの怒りはどこへやら。ユベール王太子は鬼の形相から打って変わって優しい表情になり、彼女を見つめる眼差しは何処までも甘い……。
「なんて優しいんだ。君を虐げた女だというのに……この女は君に酷い仕打ちを……」
「ユベール、私は気にしていないわ。それよりも、ユベールが女性に暴力を振るう事の方が悲しいくて辛いの。ユベールの手は国を守るためのもの。弱き人達に手を差し伸べるためにあるものよ」
「クロエ！！」
感極まった王太子がクロエを抱きしめる姿は誰が見ても恋人同士でした。よくもまあ、婚約者のいる目の前でラブシーンができるものです。恥を知らないのかしら？少しは遠慮するものでしょう。大体、なんですの？ひ弱な私に暴言を吐いておいて、弱き人達に手を差し伸べる？バカじゃないかしら。溜息がでそうですわ。すっかり二人の世界に入ってしまっている愚か者達。それに感動しているバカ数名。類は友を呼ぶとはこのこと。
それにしても、ユベール王太子は理解しているのかしら？
私との婚約の意味を。
この婚約は王家にとって……いいえ、ユベール王子が王太子でいられるために必要不可欠なものだと言う事を。
そもそも、この婚約は王命によるものです。
この誰が見ても政略だと分かりきった婚約。それを王太子が嫌悪していた事は知っています。
けれど、いくらユベール王太子が私との婚約を嫌がっていたとしても、流石に異を唱えるほど愚か者ではないと思っていたのですけれど過大評価だったようですわ。いいえ、違いますわね。「嫌だ」と言えるほどの度胸がないと思い込んでいましたわ。
最悪です。
ええ、本当に最低な気分。
政略結婚が嫌なら自分から国王陛下に陳情すればいいものを。
こんな芝居じみた茶番劇をする前にやるべきことがあるでしょうに。
その後、王太子殿下から裁判所への出頭を命じられたのです。
どうやら、バカを止める者は誰もいなかったようですわ。
本当にこの国の未来が心配になります。
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