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11.ミレイ側妃side
「男爵令嬢、困ります。これは貴族なら知って当然の常識です」
「そんなこと言われたって……」
「せめて基本だけでも出来なければ恥をかくのは男爵令嬢です」
「仕方ないじゃない。私はずっと市井で暮らしてたんだもの」
「それでも今は貴族令嬢です」
「だからって急に言われても……すぐに出来るわけないじゃない……」
「言い訳は結構です」
「なっ?!」
「公爵令嬢は一度も言い訳はなさいませんでした」
何なの!この人!!
私とあの女を比べてるの!?
冗談じゃないわよ!!
「あ、あの女は生まれた時からの貴族じゃない!生まれながらの貴族なら私だって同じ事が出来たわよ!!」
「……何か勘違いをなさっているようですが、生まれが貴族だというだけで公爵令嬢が優れている訳ではありません。それを言うのなら王太子殿下は公爵令嬢よりも勝っている事になりますが、実際はそうではありません」
「な、なによ……」
「王太子殿下の婚約者として、未来の王妃として公爵令嬢がどれだけ努力をなさっていたのか存じております。人が見ないところでも努力を怠らない方でした。出来ない事を出来ないままで終わらせる事のない方でした。それに比べて、貴女は何ですか。言い訳ばかりではありませんか。やる気を見せる素振りすらなさらない有り様。そのような事では公爵令嬢に追いつくことは決してできません」
そう言うと教育係は部屋から出て行った。
この教育係も同じ。
前の人と同じ。
なんで皆、私を責めるのよ?
冷ややかな声と嘲るような目。
感じ悪いったらないわ。
その後、教育係は解雇された。
ざまぁないわね。私を見下すからクビにされるのよ。
これでやっと終わった。
そう思っていたのに……。
『何故こんな簡単な問題が解けないのですか?』
『背筋を伸ばして静かに歩く。猫背を直さない限りは外に出る事は許されません』
『泣いている暇があるのなら予習をしてきてください』
前の人より厳しくなった気がする。
私が泣くと「甘えない」と叱責を受けた。
悔しい!
こいつら何様よ!
ただの教育係のくせに!!
私は王太子の婚約者よ!未来の王妃なのよ!敬いなさい!!
王太子の婚約者として王宮で暮らし始めて三年の月日が流れた。
私が夢見た結婚式は未だに成されていない。
妃教育が終わらない限り結婚式など挙げられない――――と、何人目か分からない教育係が言っていた。
知らないわよ!そんなこと!!
何時まで経っても終わらない「妃教育」。
そのせいで私は「王太子妃」になれなかった。
豪華な結婚式のないまま、私は「側妃」として後宮入りした。
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