18.同じドレス3

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18.同じドレス3

「ふふっ。ミレイ側妃はおかしな事を言いますわ」 「何がおかしいのよ!」 「私に着替えてこい、と仰ったではありませんか。それとも、私の聞き間違いでしょうか?」 「それの何が悪いのよ!私は王太子の妃なんだから!あんたよりも、私の方がずっと偉いのよ!!」 「あらまぁ……、とんだ妃もいたことですわね。ご自身の国の立場を理解していないなんて。そう思いませんか?王太子殿下」  私の言葉に王太子殿下は答えずにただ目を逸らしているだけでした。だんまりはいけません。 「なによ!私の方が似合ってるんだから!!そうでしょう?」 「それは……」 「何で黙ってるの?この女に言ってやって!」 「……」  とんでもないムチャぶりに王太子殿下も困り果てている様です。さて、どう返答するのでしょう? 「……ミレイ。そのドレスは君によく似合っている……。ヴァレリー公爵令嬢、どうだろうか。ここは私に免じて妃の無礼は許して欲しい……」  あらら、妃可愛さに庇われる選択をなさいましたか。側妃の失態を庇うのは結構ですが、ドレスのデザインをよく見てから庇うべきでしたわね。それとも分っていて仰っているのでしょうか?一国の王太子が頭を下げているから当然許されるとでも思っているのでしょうか?愚かですわね。 「さようでございますか。つまり、アクア王国の総意だと受け取ってもよろしいのでしょうか?」 「……そうではない。ヴァレリー公爵令嬢、たかがドレスが同じくらいで目くじらを立てないでくれないか?ただ偶然、同じドレスになってしまっただけの話だ。そうだろう?これを国の友好の証と思って欲しい」  ちょっと意味が分かりません。  マナー違反した相手と友好関係を築けと?それも国同士で?  この王太子は何を考えているのでしょう?私、びっくりです。 「たかがドレス、ですか。無礼を働いた己の妃に罰を与えることもなく許してくれだなんて……一国の王太子に相応しくないセリフの数々ですわね。私が貴男であれば自分の妃の失態に相応の対応をとりますが?」 「なっ!?」  私が許すと思っていたのでしょう。  王太子は絶句していました。  この方、本当に帝王学を学ばれたのでしょうか?この国の教育方針に疑念しか抱けません。  マデリーン様の婚約者だったとは到底思えない。  この王太子が今まで大きな失態を犯さないでこれたのは偏にマデリーン様の働きがあってのものでしょう。傍に控えて陰ながらフォローしていらしたの筈です。彼女の献身を知らずに……。いいえ、ここまでくると逆に憐れですわね。フォローしてくれる存在がいない。婚約者が自分の失態を未然に防いでいた当たり前の環境に慣れ切っていた弊害ともいえるでしょう。  この王太子は自分が今までどれだけ恵まれた環境にいたのかを理解していない。  与えられて当たり前。  尽くされて当たり前。  国を背負って立つ人物だとは到底思えない思考回路は憐れみしかありませんでした。  
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