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20.側妃付きのメイドside
初めてその方の姿を見た時からお慕いしていた。
美しく、賢く、お優しい。
この世にこれほど素晴らしい方が存在していることに驚かされた。
そしてその方がいずれこの国を背負って立つ方だと知り、歓喜に震えた。だから何の疑いもなく信じていた。
その方が担う輝かしい未来を。
その方が大勢に与えるであろう希望を。
その方が導くアクア王国はさぞや美しい世界であることを。
その時がやって来る日を待っていた。
ずっと見守っていた。
その方の光り輝く姿を見るために努力を惜しまなかった。いずれ来るであろう未来のために精進した。誰よりも早く出世したのもそのため。
全ては未来の王妃殿下になるはずだった、マデリーン様の為のもの。
本当なら今頃、王太子妃として輝かしい場所にいた筈のマデリーン様。
マデリーン様が本来居る場所だったところに図々しくも居座り続ける女。
正妃ではない。側妃であったとしても許せるものではなかった。しかもあの女はあろうことか正妃になる事を目論んでいた。卑しい女が!許せる筈がない!!
マデリーン様を貶めた女。
あの女の傍近くにいる事に虫唾が走った。
優秀なメイド。
だから選んだんだと王太子直々に言われた。
それで私が喜ぶと思ったのか!?
王太子から言葉を貰って妃の専属メイドになれたから尽くすとでも?愚かな!
私の忠誠はマデリーン様にあるというのに!
私の献身は未来の王妃の為のものだというのに!
間違ってもあの女……側妃のような品行下劣で卑しい者の為ではない!
マデリーン様の長年の献身をいとも容易く無かった事にした王太子。
そればかりか冤罪を被せ、マデリーン様を王都から追い出した。
愚かすぎる王太子とその側妃にまともな公務など出来るはずもない。思った通り、国賓の令嬢に失礼極まる対応ばかり。それの尻拭いをする羽目になったのがマデリーン様だった。
領地で静かに過ごしていたマデリーン様を王都に召喚した理由が王太子達の後始末。
バカにするのもいい加減にしろと言いたい。
マデリーン様の長年の苦労を知らず。知りもしない愚か者たち。
あの王太子が国王になるなど許せる筈もなかった。
『何一つ苦労した事のない王太子は彼女の苦労を知らないのだろう。妃教育以外に本来なら必要のない帝王学まで学ばされていたということを――――』
とある王子殿下が教えてくださった残酷な真実。
許せる筈がない。
寝る間も惜しんで勉強に励み続けたマデリーン様。
次期王妃として恥じぬ女性となるために全てを磨き続けたマデリーン様。
それらを当たり前のように捉え、あたかも所有物の如く扱い続けてきた王太子。
『今の王太子を国王の座に就かせて良いと思うかい?彼は自分の我を通してあんな女を妃にしてしまった。このうえ、国王という地位と権力を手に入れたらどうなると思う?彼の寵愛深い女が未来の王妃になる可能性は大きい。側妃だからといって安心はできないんだ。だってそうだろう?要は、王妃の代わりに公務を出来る存在がいれば問題は何一つないんだから。きっと彼が国王になったら直ぐに側妃を娶るはずだ。仕事が出来る優秀な女性を選ぶ筈だ。その時に誰が相応しいか、彼が、いや、この国の上層部が誰を頼りにするか……わかるだろう?』
ええ、分かりますとも。
マデリーン様を側妃に据えて自分達の代わりに仕事をさせるのでしょう。それも手柄は全て自分達のモノにして。
嫌な未来。
ですが可能性は十分あり得ます。
その場合、マデリーン様は白い結婚になる可能性が高い。
誇り高いマデリーン様に相応しくない地位。
『そんなことが許されて良いと思うかい?』
認められません。
断じてそのような未来は認められなかった。
だから私は――……。
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