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26.思惑2
アクア王国の失態はそれだけではありません。
私のメイド達から報告を受けた父が「最低限のマナーすら出来ない側妃がいる国に娘を嫁がすなど論外。常識外れの男に嫁がすなど更に言語道断だ!!」と激怒した文面をアクア王国に送り付けてくださいましたから。
王国は即座に謝罪なさいましたが、王太子殿下は最後までミレイ側妃の非を詫びる事はありませんでした。
彼女を側妃になさったのは王太子殿下です。責任がないとは言わせません。
もしかすると、王太子殿下は私が父に告げ口をしたと思っているのかもしれませんわね。
馬鹿な方。
私からなんて出来る筈ありませんでしょうに。
この国に来てから秘かに王家の影を付けられている気配を感じます。恐らく護衛役でしょう。私に万一の事があった時の為に。そして同時に監視役でもありました。
まぁ当然ですね。
ですから、私はあえて隙を見せないように心掛けていました。
帝国と王国の交渉の邪魔にならないように、と気遣っていたのです。
私の行動一つで帝国の不利になるなどあってはならない事。お陰で帝国にとって有利な条件で条約締結まで持って行けたのは不幸中の幸いでした。
国王陛下は最後まで王太子殿下を庇っていました。
再びマデリーン様を王太子殿下と婚姻させようと計画を立てていると知った時は正直、腹立たしく思いましたが。この国王は何を考えているのか、マデリーンに生贄になれと?とメイド達に愚痴ってしまった程です。王家の影が聞いている?関係ありません。寧ろ、聞こえるように結界を解いてあげていたんです。ええ、わざわざ聞かせていました。是非とも国王に、引いては上層部に報告してもらうために。それ以外の時は必要に応じて結界を張ってはいましたが、それは彼らも把握済みでしょう。
アクア王国の貴族令嬢達は皆さま私と同じ心境だったようです。まぁ、当然でしょう。私を味方に引き入れるためなのかは分かりませんが、王太子と側妃の裏情報を沢山流してくれました。中には嘘と思しき情報もありましたが。
正しく使わせていただきました。
王太子殿下を廃嫡させ、王籍剥奪後、名ばかりの貴族として辺境の地に隔離する。これが我が帝国の最終決定事項でした。
この決定が下った時、国王陛下は「王太子はそこまで酷い行いをしたのか!?」と驚いていましたが。
驚く事ですか?まだ優しい方ですよ?それとも毒杯の方が良かったと?――――と言うと黙ってしまいましたわ。言い返せないのなら言わなければよいものを。
結局のところ、国王陛下は分かっていなかったのでしょう。
権力が持つ事の意味を。
何かあれば責任を負わねばならないという事を。
時に自分以外の者のために責めを負う事もあると。
その無自覚な傲慢さが元王太子を増長させたのでしょう。
今回の一件で少しは己の罪を反省してくだされば良いのですが。無理でしょうね。やはり、退位後は元王太子のいる地に幽閉しましょう。最愛の息子と一緒なら陛下もお喜びになるでしょうしね。
帝国の準保護国になるのです。新体制の礎になってもらいましょう。
「それでは、これからも宜しくお願いしますわね。第三王子殿下」
私は新体制の影の功労者に声を掛けました。
「えぇ、こちらこそお願いします。ヴァレリー公爵令嬢」
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