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3.悪役1
フリッド・オーファンラスター公爵子息とジェニー王女殿下。
この二人は幼馴染の関係にあり、しかも婚約の話まで出ていたほど親しい間柄だったらしいのです。
ジェニー王女に他国との縁組話が出なければそのまま順調に話が進んでいたことでしょう。
互いに婚約者がいる身になっていながら逢瀬を重ねているのだから驚きです。
そんな二人に注意を促す者が少ないのも問題でした。
忠言するどころか二人の仲を肯定し、応援する者が多いくらいなんですから。
そもそも王女にも婚約者がいらっしゃるのですよ? それを分かっていて他の男と親しくしているなど言語道断!もしこのことが公になったなら、王家の信頼を大きく損ねることになります。
それを当人だけでなく周囲までもが理解していない様子に呆れて物も言えません。
相思相愛の二人の仲に割って入った「他国の婚約者達」は、この国では「愛し合う恋人同士を引き裂く悪人」だと認識されています。
つまり、私は『悪役』ということです。
何が悲しくてそんなレッテルを貼られなければならないのでしょうか? 私のどこが悪いと言うのです!? こんな理不尽なことがあっていいはずがありません!!
この国で友人と呼べる人間は少ないのは間違いなく二人のせいでしょう。
折角、お父様が私のために色々と用意してくださったというのに。
『ブランシュ、どうせならボルゴーヌ王国の教育を受けてみないか?学舎に通えばそれだけ人脈が広がるというものだ。茶会や夜会では得られない経験を積むことができるぞ?』
お父様がそう言って私に留学の話を持ちかけてきました。
それはとても魅力的な提案でした。
婚約者との交流以外にもボルゴーヌ王国を知ることは将来何かしら役に立つかもしれないと思ったからです。
お父様に言われるまでもなく留学することには賛成しましたよ? だけど……まさか私がこの国で「悪役」「お邪魔虫」と見做されるなんて思いませんでしたわ!! それもこれも全てあの二人がいけないのです!
溜息が出そうです。
私のメイド達もフリッド様に憤慨していますもの。
「……どうしてこうなったのかしら?」
呟いた声に応える者はいません。
自室にいるのは私一人なので当然のことですけど。
まあ、愚痴の一つも言いたくなるというものです。
こうなってしまうと婚約の意味を疑いたくなってきます。
『留学のついでだ。未来の公爵として、また、ブランシュの婿に相応しき人物かどうか見極めてくるといい』
そう、お父様に言われましたが、もうそんなことする必要もないかもしれません。
だって……。
私がこの国で何と呼ばれているのか知っていながら庇う素振りすらしない男ですもの。
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