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4.悪役2
婚約当初は普通でした。
茶会の参加、夜会やパーティーでのエスコート。デート、プレゼントの数々。婚約者の義務をきちんと果たしていました。
それがいつの間にか崩れていったのです。
何が切っ掛けだったのか……あ!あの時からだわ!
確か、「ジェニー王女殿下が風邪を引いたから、お見舞いに行かなければならない」という内容から始まった。丁度、観劇を見に行く予定だったのを急遽一人分キャンセルしたんだった。ええ、私は観に行きましたとも。
ただ、一人で観劇に行ったことを何故か責められましたけど。
それからかしら?フレッド様が何かと王女殿下を引き合いに出すようになったのは……。
『王女殿下は昔からあまり身体がご丈夫ではないんだ。そのせいか気心のしれた友人がいない。兄妹同然の幼馴染の私が守ってあげなくてはいけないんだ』
という訳の分からない理由で茶会やデートをドタキャンすることが続きました。
その度にフレッド様は「申し訳ない。この埋め合わせはまた今度するから許してくれ」と言っていましたが、それが実現される事は今日までありません。更に、自分で謝罪する事すらなくなりましたので、これから先もそんな日は来ません。今となっては婚約者として最低限の義務さえ果たしていないのですから。
ただ、フレッド様と王女殿下が親密になればなるほど不愉快な噂はひっきりなしに湧き出る始末。
私の耳に入るようにわざと流されているものだと気付いた時は怒りを通り越して呆れてしまいましたわ。
公爵子息と王女殿下の真実の愛を引き裂こうとする悪女――――
これが、この国の社交界で囁かれている一番ホットな噂です。
若い令嬢を中心に広まって、今では高位貴族の間でもこの話が話題に上るほどです。
フリッド様が否定しないせいでどんどん尾ひれが付いています。
婚約者である私よりも王女殿下との仲の方が親密だとか、夜会では常に寄り添っているとか、人前でキスしていたとか、挙げ句の果てには既成事実があったなどと吹聴する者までいる始末です。
まったく馬鹿らしい限りですわ。
ですが、一番腹立たしいのは……フリッド様とジェニー王女殿下が自分達の「悲恋」に酔っている事です。
「悲劇の主人公」を気取っているようで気持ち悪い。
この二人のせいで私は謂われのない非難を受ける羽目になっているのですから!
未婚の令嬢などは特にそうです。
私のことを貶めるような発言ばかりするのですよ。
それなのに誰も注意しようとしません。
この国は一体どうなっているのですか!?
ボルゴーヌ王国の公爵子息と婚約していても、私は他国の人間。謂わば客人ですよ?
そんな人間に対して失礼極まりない言動をしていることに気付く者がいないとはどういうことです? この国に私の味方はいないようですわ。
一年近くで本性を現すとは、さすがの私でも予想外でした。
このままでは婚姻できませんわね。
大使を通じて帝国に報告が入っているはず。
フレッド様はご自身の事を理解しているのかしら?そんな疑問を抱きながら私は父に手紙をしたためるのでした。
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