5.悪役3

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5.悪役3

【噂を利用せよ】  帝国大使から渡された父からの返答は無情なものでした。  噂を利用するとは何ですか?  放置せよと言われた方が遥かに分かり易いというもの。 【お前の評判が落ちればそれだけボルゴーヌ王国の評価がさがる。今、帝国内でお前は注目されている。周辺国はボルゴーヌ王国の態度に不信感を抱いている。数年前の王妃殿下の件もあるからだ。王妃の件が風化している中で、帝国貴族の令嬢がボルゴーヌ王国の貴族と婚約し、蔑ろにされているとなれば嫌でも注目が集まる。その隙に付け込むのだ】    父の言うことは理解できます。  けれど、それはあまりにも乱暴すぎますわ。  第一、私がボルゴーヌ王国に滞在している理由はフリッド様と婚約しているからです。その婚約を背景に王国の大学に留学している身です。  私が帝国のスパイだと疑われたらどうするおつもりなのかしら?   【帝国貴族とはいえ我々は新参者。疑惑を持たれる事は少ないだろう。こちらとしてもお前の安全は全力で守るので安心するといい。そのために大使館に滞在させているのだからな。ブランシュ、王家やオーファンラスター公爵家が何と言ってこようとも彼らの城に住まう事はないように。何があるか分からん。それと――――】    手紙はまだ続いていました。  読み進めていくうちに、とんでもない事に巻き込まれてしまっています。  私、こんな面倒なことに関わるつもりはなかったのに!  お父様、分っていて私とフリッド様の縁組をまとめましたわね!!  まったく。  私を何だと思っているのでしょう。  凄腕の外交官でもなければプロのスパイでもなく、ただの公爵令嬢だというのに……。  小娘一人で対応できると、お父様は本気で思っているのでしょうか!?  お父様、それは過剰評価というものです。  本当に眩暈がしそうな展開です。  誰の意図でしょう?  皇帝陛下?  宰相?  それとも他の誰かかしら? どちらにしても迷惑極まりない話です。  私は溜息を吐きつつ、これからの事を考えるのでした。
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