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7.噂2
恋愛の噂は皆様食いつきが早いですね。
私はもうお腹いっぱいです。
まともな貴族は右往左往していますわ。自国の王女が不貞をしているのですから焦るのは当然でしょう。
若い貴族や平民たちは王女と公爵子息のままならない恋物語に夢中で、事の深刻さがわかっていないようですけど。
王族の醜聞ほど厄介なものはないでしょうに。
実害が出ていないせいでしょうか?
これから起こると考えないあたり平和ボケしている気がしますわ。
「まあ、仕方ありませんわ。だって、この国は浮気を容認される文化を持っているようですもの。他国の私が口を挟む問題ではありませんわね」
「なっ!? なにを仰るのですか!!?」
「あら?だってそうでしょう?婚約者がいると分かっていながら自国の王女の浮気を応援されているのですもの。これを文化と言わずに何と仰るのかしら?」
真っ向から否定はしませんわ。飽く迄も、この国の文化として。私は他国の人間として異文化を理解する義務があるという態度を崩しません。
帝国の大使もやんわりと、この国の王侯貴族の在り方を批判してくれています。さすが、できる男は違いますわね。
この分では王女殿下の婚約が白紙になるのは時間の問題でしょう。
「ブランシュ嬢、世間では何かと私と王女殿下のあらぬ噂が囁かれておりますが、全て根も葉もない噂です」
「まぁ、そうなのですか?」
「はい。先程も申し上げましたが、私と王女殿下の間には何もありません」
「ですが、深夜に王女殿下の寝室から出て来られたとお聞きしましたわよ?目撃者もいるようですし……」
「それは……」
「私は何も責めている訳ではございません。ただ、事実確認をしているだけですわ。誤解しないでくださいまし」
「はい」
「それで……やはり真実なのですか?」
「いえ、そのようなことはございません。深夜、王女殿下のお部屋を訪ねたのは本当ですが、それだけです」
「わかりましたわ。信じましょう」
「ありがとうございます」
「ところで……王女殿下は懐妊されているとか。それは本当のことなのかしら?」
「そのような事実はございません。王女殿下はお身体が弱く、月のモノが遅れていらっしゃるようです。恐らくそのせいかと……」
「まあ、そうなのですね」
「はい」
「それならば納得ですわね」
全然説得力はありませんが、虐めすぎるのも可哀想なのでこれくらいにしておきましょう。
それにしても、王女殿下の妊娠疑惑は根深いようですわね。
ここまで頑なだと逆に怪しく感じてしまいますわ。
「ところで……先程のお話ですが……」
「ああ、そうでしたわね」
「はい」
「私は留学期間が終わり次第、帝国へ帰国いたしますわ」
「そう……ですか」
「えぇ。ですから、あまり意味のない忠告かもしれませんが……今のうちに噂を消し去っておくことをオススメ致しますわ」
「公爵家も噂を否定して回っているのですが、なかなか上手くいかないようでして……」
「困ったものですわね」
「はい」
噂の払拭は難しいようですね。
本人とその家が否定したところで逆に噂が本当なのでは?と疑う者の方が多いでしょうしね。
私の計画通りですから全く困りませんが。
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