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決意
「おい、てめえ! いま隠したもん見せな!」
ジェイにすごまれ、ロビーは身を硬くした。何という不運。ならず者に遭遇しないよう裏道に迂回したのに、寝床の前でジェイに見つかってしまうとは。
(もしかして、待ち伏せされてた……?)
下手な嘘をついても、殴られて奪われるだけだ。ロビーはパンとチーズのかけらをしぶしぶジェイに見せた。
「これだけしかないんだ。今日は見逃してくれよ。たくさん手に入ったら、明日は半分あげるから」
「しけてんな、それっぽっちかよ。まあいい、今日はそれで勘弁してやる。さっさとよこせ」
「やめて、僕だって食べなきゃ死んじゃうんだ」
「なら死ねや!!」
ジェイが凶悪な顔で威嚇してきたので、ロビーは頭を下げて両手を差し出した。スラムは不潔で、治療してくれる者もいない。大けがをさせられたら命とりなのだ。
「へへっ」
馬鹿にするように笑い、無法者がロビーの食料を奪いとる。その場でパンとチーズがジェイの口に放り込まれるのを、ロビーはただ黙って見ていることしかできなかった。
周りに、他の連中が隠れて見ている気配を感じる。誰も助けてくれない。当たり前のことだ。
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