脱出

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脱出

 あたりが闇に包まれ、みんなが寝床で深い眠りについた頃。ロビーは忍び足で行動を開始した。  動くものがいないスラムは、空気が停滞していてひどく臭う。暗くて目がきかないせいで、嗅覚が敏感になっているのかもしれない。いずれにせよ、こんな場所とはもうおさらばだ。  迷路のように入り組んだ路地を抜け、ならず者が寝ぐらにしているエリアを避けて進む。はやる心を抑えて慎重に動いたおかげで、誰にも見つからずに扉にたどり着くことができた。見張りもいないようだ。  ロビーは震える両手を扉につけ、体重をかけて押してみた。 (う、動く……!)  扉がゆっくりと外側に開いていく。その隙間から差し込む眩ゆい光がスラムを帯状に照らし、脱走者の影を床にくっきりと映し出している。  ロビーは目をかたくつぶって、体の分だけ開けた扉から緑色の空間へ足を踏み入れた。 (やった! スラムを出たぞ!)  眩しくて、あたりがほとんど見えない。けれど、ロビーは知っている。グリーンチューブは一本道。まっすぐに進めば、外の世界に行けるのだ。  ロビーは走った。期待に胸を高鳴らせて。 (速く、速く、速く、もっと速く!!)  行く先に、白い壁が見えた。いや、扉だ。風か、振動のせいか、ロビーを誘うようにゆらゆら揺れている。あそこがグリーンチューブの終点、つまり、外の世界の入り口に違いない。 (楽園だ!!)  ロビーは白い扉に体当たりして、外に飛び出した。
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