楽園

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楽園

「おっと、こいつはまた活きのいいのが来たなぁ!」  地を震わせるような、低い声がした。  グリーンチューブを飛び出したロビーの目の前にあるのは、銀色の鉄格子。ぐるりと見回せば、そこはスラムよりずっと狭い、檻の中だった。 (え、なんで? ここ、外のはずじゃ……?)  照明が明るすぎて目がくらむ。その光がフッとかげり、思わず顔を上げた瞬間、ロビーは恐怖で縮みあがった。  檻の上から、見たこともない巨大生物が自分を見下ろしている。ギョロリとした二つの目は、ロビーの頭ほどもある大きさだ。 (ま、まさか……ニンゲン……?)  スラムで生まれ育ったロビーは、話に聞いたことしかない。けれど、おとなの中には何匹か、ニンゲンに捕まってスラムに連れてこられたという者がいた。ニンゲンの巨大さと残忍さを語る彼らの怯えようを、若い者たちはみんな、陰で笑っていたけれど。 (こんなに、大きいなんて……)  誇張ではなかったのだ。ロビーは慄き震えながら、ニンゲンの足元から頭までを眺めた。そしてその背景にある惨状に、目が釘付けになった。  ニンゲンの後ろに見える、灰色の壁。そこには、全身の毛を抜かれ、逆さ吊りにされた仲間の遺体がずらりと並んでいる。その中に、見覚えのある顔立ちの、痩せた子どもの姿があった。 (あぁ、ニニム……っ!)  グリーンチューブを抜けた先。そこは確かに、明るく賑やかで、食べ物のたくさんある場所。ロビーたち食用ネズミを調理する、レストランの厨房だった。
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