悪女になんかさせない

13/16
前へ
/16ページ
次へ
「私は戦争で家族を亡くしてな。父は戦争に出て数年帰らぬまま戦死の手紙だけが届き、業火から母と妹と逃げたんだが、少し逃げ遅れた妹をかばった母とともに、ふたりとも敵の鉄砲で死んだよ」 「そうだったんですか……」 (そういえば、どういう経緯でロザリー様が戦争孤児になったのか、私知らなかったな……) 「だからだろうな、そなたを捨て置けなかったのは」 「ロザリー様……」 「戦争なんてこの世からなくなればいいのに」 「……」  ロザリーの言葉を聞いて、ゆりなの中で12巻のシーンが蘇る。 (戦争に導いたなんて……ロザリー様が、一番戦争を憎んでいるはずなのに……!) 「さて、そろそろ寝ようか」 「はい……」  ゆりなの感情の変化を感じ取ったのか、ロザリーは優しく微笑んで促してくれる。 「おやすみなさい」 「おやすみ」  ゆりなはロザリーに借りた毛布を抱きしめて、頭を下げたのだった。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加