悪女になんかさせない

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「これからまずはそなたの部屋を用意する。その間に私は国王陛下に今回の戦果を報告してくるから、その部屋で待っていてくれ」───  そう言われて、部屋で待つこと1時間ほどして、ドアをノックする音が聞こえた。 「待たせたな」 「いえ……」  部屋に入ってきたロザリーの手には、軍服と同じ配色の服。 「これを着なさい」  ロザリーから受け取って広げてみると、軍服と形違いのデザインのスカートだった。 「これからそなたには、早速私の手伝いを命じる」 「はい」 「基本的にはこの軍服を着て行えば、自由に城の中を歩いても咎められない。それは騎士団の命令で動いている人間だとわかってもらえる記号だ。そこの衝立で、着替えてきてくれるか?」 「わかりました」  衝立の裏側に隠れて着替えていると、さらにドアをノックする音が聞こえた。 「アシュトンか?」 「はい」 「入れ」  アシュトンが部屋に入ってきた気配がする。 「本日の総合訓練ですが……遠征のあとですし、少し休まれたほうがいいのでは?」 「いや、大丈夫だ。指揮を執る」  着替え終わったゆりなが衝立から出ると、アシュトンが困り顔でロザリーを見つめているのが見えた。 「あの……着替え終わりました」 「ああ……よく似合っている」 「ありがとうございます」 「さて、アシュトン、彼女に書類整理を教えてやってくれ。あとは城の案内も。ゆりな、アシュトンの言うことをよく聞くんだぞ」  ロザリーはそれだけ言うと、アシュトンとゆりなを置いて部屋を出ていった。
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