悪女になんかさせない

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 次にゆりなが目を覚ましたのは、体感1時間後くらいだった。  しかし、周辺を見渡すと確実に家ではないことはさすがに錯乱状態だったゆりなにもわかった。 (ここ、どこ……?)  まるでネットニュースで読んだような戦争跡地みたいな焼け野原に、横たわっていたのだった。 (どうして……? なんなのここ……)  上半身を起こし、状況把握に努めるも、何もこんなところに置き去りにされる覚えはない。  ゆりなは靴も履いておらず、家にいたときと同じ格好で外に放り出されてしまっていた。 (これも、夢なんだよね……?)  そう思った瞬間。 「危ない!」  その声にびくつきながらも、反射的に顔をあげると、火のついた柱がこちらに倒れてくるのがわかった。  とっさのことに身体が動かず、硬直してしまった瞬間、何者かがゆりなをかばうように飛んできて柱をすんでのところで避けた。 「怪我はないか?」 「あ……はい……」  顔をあげると、それはあれほど焦がれていたロザリーだった。 (え……? コスプレ……? じゃないよね……?)  想像通りの声、想像通りの声の抑揚、想像通りの目の美しさ。 (なんで、ロザリー様が……?)  戸惑うゆりなに手を差し伸べ、ゆりなはその手を取って立ち上がった。 「あ、ありがとうございます……」 (ロザリー様に、触れられた……)  自分のその手をこっそりぎゅっと握る。 「見慣れない服装だな。どこから来た? なぜ靴も履いていない? 危ないだろう」  しゃがみこんで足に怪我をしていないかを見ようとしたロザリーに、ゆりなは慌てて頭を振る。 「あっ! だ、大丈夫ですから……!」 (ロザリー様に自分の足を触らせるなど言語道断……!)  まごついていると、そこに少し遅れてアシュトンがやってきた。 「大丈夫ですか? ロザリー様」  その様子を見て、ゆりなは確信した。 (やっぱり……ここ、『プリセシア国伝記』の世界の中だ……)  これほど見覚えのあるキャラクターたちが目の前にいる。そしてこの焼け野原という現代日本ではありえない風景。そのことが、ゆりなの確信をさらに強いものにした。
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