お姉様たちを拷問する双子姫

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お姉様たちを拷問する双子姫

 最終審判まで七日 「ナジェーヤ、また嵐だよ」 「もう冬が来ますものね。山も近いし、いつも空はご機嫌斜めね」  窓外で雷がごろごろ鳴って、嵐のひゅうひゅうという声が室内に入って来る。だが、丘の上にある灰色の高塔に住む、ヴィシネヴェツキ家の双子の姫たちは穏やかに刺繡をしている。まるで、何も怖くないというように。  この部屋で使われているのは普通の蝋燭ではなく贅沢な灯油ランプだ。灯油ランプに照らされる寛ぐ二人の口元には、小さな牙が見え隠れしていた。 「ナタリア、怖い?」 「あんまり」  天蓋付きベッドは柔らかく、二人の繊細で美しい体を優しく包み込んでいた。 「でも、『普通の女の子』は暗闇を怖がり、嵐に怯えるものでしょう?」 「私たちは吸血鬼とエルフのハーフだ。人間かエルフかのか弱い少女じゃないよ」  それもそうねと言って、双子姫の姉のほうが微笑む。深碧色の大きい目に背中まで長い赤銅色の巻き髪、姉のナジェーヤは可愛くてふわふわ少女。  妹のナタリアも深碧色の大きい目をしているが、錫色の髪に鋭い目つきで、凛々しい少女に見える。双子姫は二卵性双生児なので、顔と雰囲気が違う。 「それよりも、お姉様たちに会いに行かない? 七日後には最終審判なんだよ」 「まったく、ナタリア。いくら訊きに行っても、お姉様たちの答えは変わらなかったのに。お姉様たちは、反乱罪を犯したわけを話してはくれないわ」 「でも、知りたいんだ。もしお姉様たちがすべてを話してくだされば……。みんなを救えるかもしれないんだから」 「お姉様たちの罪は許されるわけがないわよ。それよりも、わらわたちが吸血鬼の帝王に罰せられない方法を考えないと! どうやって地位を守るのかって」 「でも、聞きたいことが沢山あるよ。行きましょう!」 「もう、わらわはちっとも彼女たちと会う気がないのに……。今夜だけよ」  不満を言い続けながらも、少女は妹を追いかけて典雅で心地よいリビングを出た。高い塔にある廊下は薄暗く、地下へと続く階段は体の芯まで凍えるように冷たかった。それは何も、嵐が来ているせいだけではなかっただろう。
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