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「そろそろ、降参するか?」
「馬鹿………言ってんじゃ、ねぇぞぉぉ!」
息を切らし、アモンは両手の炎を黒き盾を殴り続ける。しかし、薄氷のように見える壁は、まるで要塞の城壁を叩くが如く、決して揺らぐことのない様を見せていた。
「そろそろ、彼も限界だな」
アイムが頃合いかと、口の左右に手を置く。
「先生、そろそろ本番にしませんか? もう、盾が無事に機能した事は確認できたのでしょう?」
その問いに相田は右手の指で輪を作り、肯定のサインを見せた。
「だ、そうです」「は?」
アイムはシドリーの襟首を片手で掴むと、小石を投げるかのように闘技場の中心へと放り投げた。
「え………えぇっ!?」
無事に着地するものの、そこは肩を上下させているアモンの隣だった。
「よぉ………どうした? 悪いが、まだ勝負は終わっちゃいねぇぞ。な、何しに来やがった」
炎の勢いが半減している。彼は顎から滴り落ちる汗を拭い、シドリーを追い払おうとする。
「私の意思ではない。いきなり投げ込まれたんだ」
シドリーは投げ込んだ犯人を睨み付けるが、アイムは満足そうに笑い、左手を高く伸ばす。
「これより見届け人は、魔王軍親衛隊所属のアイムが担当します。3人共………いえ、先生以外の2人は全力で頑張ってください」
「「はぁ!?」」
流石にアモンだけでなく、シドリーも怪訝な表情を作りだした。
「ちょっ、待てよ! まだ俺との決着が終わっちゃいねぇ!」
「そうです。この戦いに私が入る理由が分かりません」
反対する理由はそれぞれ異なるが、2人は勝負の仕様を変更することに納得しなかった。
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