第四章 青灰色の狼アモン

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「くっ! これも駄目か!」  彼女の舌打ちが苦い表情と共に放たれる。アモンの背後で彼の視界から姿を消し、攻撃の直前で旋回、急襲へと移ったつもりだったが、それでも食い止められてしまった。駄目押しに直撃と同時に八頸を乗せるものの、相田の周囲にある空気と地面を振動させただけで終わり、相手の体には全く届かない。 「足からも出せるようになったか………悪くない。最初からそうしていれば………っ!?」  語る相田の目の前に、上下2本の蹴りが迫っていた。 「まだ!」「終わってねぇっ!」  1つは頭部、もう1つは腹部を狙った回し蹴り。  余裕を見せていた表情が消え、相田の口が僅かに開く。  そして小さく言葉を紡いだ。  瞬間。シドリーとアモンは空高く打ち上げられた。  受け身を取ることなく砂の大地へと体を落下させる2人。 「良い連携だ………久々にヒヤリとさせてもらったよ」  その言葉を最後に、シドリー達の意識が途切れる。 「これは、育て甲斐がありそうだ」
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