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西洋の絵画では神聖性を表現する為に、頭上に光輪を描くらしい。そういう知識があったから、今僕の目の前にいるこの少女は神聖な人間なのだろうとすぐに察知できた。
「少年、サボりだね?」
少女は心地の良い声色で鋭い指摘をする。彼女の声のせいなのか、僕は思わず「はい」と返事をしてしまった。僕とそう年齢の変わらないような女の子。ただ他の女の子と違うのは、頭上に光輪があって、背中から大きな羽が生えているということ。
「正直者だなぁ。でもサボってはいけないよ。可愛い可愛い天使様が怒っちゃうからね」
彼女は天使だった。
天使がバサバサと羽を羽ばたかせるから、締め切られた教会の中で奇妙な風が起こった。平日の昼時ということで教会には僕一人しかいなかったのが不幸中の幸いだ。もし日曜日にこんな出来事が起これば、たちまち辺りはパニックに陥るだろう。
長い羽を綺麗に畳み、天使が僕の隣に腰掛ける。天使はキラキラとした瞳で僕のことを見つめた。
「で、何でサボってるんだい? 可愛い天使様が話を聞いてあげよう」
神様の使いである神聖な天使にこんなことは思いたくないが、この天使はきっと暇つぶしの為に僕の話を聞きたがってる気がする。決して純粋な優しさとかではなく。なんてこと、絶対に口にはしないけれど。
僕は制服の袖に視線を落とすと、ハァっと溜息を吐いた。「どした、どした」と天使がさらに興味を持ったように聞いてくる。天使になら言えるか、と僕は口を開いた。
「嫌いなんです、学校」
「友達いないから?」
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