天使

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 思わず天使を見た。天使が「あっ、図星?」と困ったように笑う。僕はギロッと天使を睨んだ。僕の視線から逃れるように天使は下手な口笛を吹いて、ステンドグラスの方を見た。僕も天使の視線を追ってステンドグラスを見た。  ステンドグラスは太陽の光を浴びて、キラキラと輝いている。月光に照らされたステンドグラスも好きだが、僕はやはり日光を浴びたステンドグラスの方が好きだった。より輝き、神聖さを増しているからだ。  「少年、ぼっちなんだ」天使がステンドグラスを見つめながら言う。 「ぼっちじゃないです! 友達を作らないだけです。一人が好きなんで」 「それ、私にはぼっちなの悲しい、ぴえんっていう風にしか聞こえないんだけど」 「違いますっ」  語尾を強めて反論する。天使は若干引きつった表情で「そう」と言った。辺りがしんと静まる。フランス人ならこの場を天使が通ったとでも言うのだろう。今、目の前に天使がいるけど。 「考えとか価値観が違うんです。そういう人たちと無理して一緒にいるのも疲れるし、自分殺すだけじゃないですか。だから僕は一人でいるんです。ぼっちじゃないです」  天使は「そっかぁ」と暢気な声で返事をする。もうすっかり僕に興味を無くした天使は、立ち上がってその場でくるくると踊り始めた。僕はもう一度溜息を吐いた。木でできたベンチの背もたれに背中を預けて、じっとステンドグラスを見つめる。 「まぁ少年。そういうことに悩めるのは今しかないんだから、とことん悩みなさい」  ステンドグラスから透き通った日光を浴びた天使が真面目な表情をして言う。僕はその言葉にぎゅっと胸を鷲掴みにされた気分になった。年齢はそう変わらないだろうに、天使の言葉は何だか重みがある。
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