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天使がドヤ顔をする。「良いこと言ったね、私」と鼻高々になっていた。そのフレーズを聞いた瞬間、さっきまでの感動が消え去る。前言撤回、重みなんて全くない。スンとした表情に戻ると、僕はやれやれと肩を落とした。その仕草を見て、天使が羽で僕を攻撃する。どうやら僕の態度が癪に障ったようだ。
「ほら、さっさと少年は学校に行く。ここには学校の後に来なさい! 可愛い可愛い天使様、本当に怒っちゃうよ!」
バシバシと羽で僕の背中をたたき、僕は外に出らざる終えなくなった。羽で外に追い出されたのは初めての経験だったので、何だか不思議な気持ちになる。羽は冷たく、柔らかかった。手とは真逆のその感覚に背中が妙にムズムズする。
教会の外に出ると、いきなり日光が目に直撃して目が眩んだ。
「少年の人生、好きなように生きよ。そう、神様も言うさ」
後ろから天使の声が聞こえる。僕は視界が戻ったところで天使の方を見た。天使がビッグスマイルを浮かべた。
「じゃあね、少年!」
耳元で鈴が鳴った気がした。リンッ、と安らぐような音。
瞬きをした時、そこには誰もいなかった。ただ人が一人通れるほどの隙間の空いたドアと、その奥に広がるステンドグラスだけが見えていた。
僕は天使に言われた通り、しぶしぶ学校までの道のりを歩き始めた。しかし数歩先で足を止めた。再び教会を見る。
何度も通った教会。それはもう生まれた時から、何度も神様に祈りを捧げた。この教会で、何度も。
──じゃあね、少年!
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